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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「競技者として悔いなく死ねる」ノルディック複合・渡部暁斗がミラノで見せた“あきらめの美学”「いまはちゃんとアスリートです」第一人者の27年間
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2026/03/01 11:01
今季限りの引退を表明している37歳の渡部暁斗。自身6度目となる最後の五輪はメダルなしに終わったが、その心中は晴れやかだったという
そもそもコンバインド自体が、ジャンプでもクロスカントリーでもトップになり切れないという諦観をはらんだ競技。あきらめるからこそ生まれるスポーツであり、そこから見えてくるものがある。
ミラノ五輪で渡部が口にした「あきらめ」
今回の五輪中も、渡部は公式練習日に「あきらめ」を口にしていた。
「最後の五輪という気持ち的な盛り上がりはそんなにないです。若干のあきらめというか、メダルの緊迫感が薄いからこそ楽しめている部分もある。完全にあきらめられているわけでもないんですが、今までと違う視点でオリンピックを見ている感じがします」
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コンバインドの五輪競技存続問題、雪不足に関わる環境問題への取り組み、子どもを持つ父親アスリートとして、今回はそんな文脈で取材を受けることも多かった。
「取り上げられ方がこれまでと違うなと自分でも思うんです。一体、俺は何者なんだろうって」
五輪最後の個人戦は大きな見せ場なく19位だった。
少し前なら受け入れられなかったはずの順位にも、渡部は意味を見いだして納得していた。SNSにはこう書いた。
「2006年のオリンピックデビューは19位。そして最後の個人戦も19位。20年かけてまるできれいに一巡りしたかのような数字の巡り合わせ。循環は自然の摂理。何故かここまで続けたことも、今シーズンで一線を退くと決めたことも自然の流れだったのかもしれない」
雪は水となって大地を伝い、空に上って再び雪となる。「循環」という捉え方は、自然を愛し、スキーを愛する渡部らしい捉え方でもある。

