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「攻めて、攻めて、攻めまくって」鍵山優真の攻撃精神…五輪2大会連続メダルに導いたフリー直前、父・正和コーチの言葉「全部転んだとしても…」
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto / JMPA
posted2026/02/17 17:48
ミラノ・コルティナ五輪のフィギュア男子シングルで2大会連続となる銀メダルを獲得した鍵山優真
迎えたショート本番。極上の4回転トウループと4回転サルコウを決める。ところが確実だと思われたトリプルアクセルが、回りすぎてステップアウトとなった。
「あちゃあ、という感じでした。公式練習が終わってからずっとリンクにいて休憩していたのですが、時間も短かったので、身体が公式練習のままキレキレで動いていて。思った以上にジャンプが浮いてしまったのだと思います。回転が抑えきれませんでした」
ただ、2本の4回転は「+5」をつけるジャッジが何人もいる圧巻の出来栄え。ステップもレベル4で、GOEは満点となる1.95点を稼いだ。さらに演技構成点は9.14〜9.39と、全選手でトップの評価。柔らかな笑みで心からオリンピックの舞台を楽しむと、103.07点と高得点で2位につけた。
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「僕の曲はすごく明るい曲調で、最終滑走というのもあったので、観客の皆さんに楽しい気持ちでスキップしながら帰ってもらえるように、僕も楽しく演技できるようにと思っていました」
父・正和コーチの言葉「全部転んだとしても…」
フリーまでは、中2日空く。練習では、4回転フリップは集中して1本跳ぶ。無駄に疲れないよう、最低限の練習にしっかり集中するスタイルを貫いた。
「ミラノに来てからは、1回1回のジャンプに集中して確認するようにしています。フリーまでの2日間も、全力でやりすぎると疲れてしまうので、しっかり抜く、という事を考えてやっていきます。フリーは4回転フリップを久々に投入するので、悔いのない演技をしたいです」
そして13日のフリー本番の公式練習は、ショートの反省から、体を動かしすぎない作戦に変更。40分ある公式練習のうち30分のみ練習した。
ショート2位の鍵山は、最終グループの5番目。直前に滑ったアダム・シャオ・イム・ファ(フランス)の得点を待っている間に足慣らしをしていると、父の正和コーチから呼び止められた。正和コーチは言う。
「普段だったら直前には声を掛けないのですが。地に足がついてないというか、重心が上がってしまっていて、氷にしっかり乗れていなかったんです。優真の表情を見て分かりました」
そして正和コーチから鍵山に、こう言葉をかけた。
「全部転んだとしても、全力でやり切ってくれればそれで十分だから」
ショート3位のシャオ・イム・ファと、ショート4位のダニエル・グラッスル(イタリア)はミスが相次ぎ、メダル圏外へと順位を落としていた。メダルに近ければ近いほど、五輪特有の緊張感は増していく。メダルを狙うのではなく、ただ全力を出せばいい。父から息子へ、その思いを伝えた。


