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「手は離さないから」と言われたのに…ジャンプ人生の始まりはコーチの嘘? ミラノ五輪“金メダル候補筆頭”27歳の新ヒロイン・丸山希とは何者か
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2026/02/07 17:00
女子スキージャンプでミラノ・コルティナ五輪の金メダル候補に躍り出た27歳の丸山希。遅咲きの新ヒロインのこれまでとは
「離すんですよね。そうなんですよ」
そう言って野沢温泉ジュニアスキークラブで昨季までコーチをしていた杉山豪は笑った(杉山の祖父の弟、杉山進はアルペン代表だった)。似たような話はいくつも聞くので、それは子どもにスキージャンプデビューさせる際の常套手段であるらしい。
「スキークラブは4年生から入部なんですが、希はお姉ちゃんがいた関係で、お弁当を持たされてしょっちゅう遊びに来てました。託児所代わりに使われてたんです(笑)。そのうち友達も一緒に来て、スモールヒルの横にある新雪のゲレンデでわちゃわちゃ転がったりしてずっと遊んでましたね」
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雪深い野沢温泉では、クラブの練習はまずジャンプ台を作ることから始まる。壺足を入れ、踏み下ろしをして、雪を踏み固めながら2、3日かけて自分たちで整備する。1日の練習もまず整備をしてから飛び始める。小学4年生になって正式に入部した丸山も男の子たちに交じって同じように作業を手伝った。
「スキー以外にも基礎体力を上げるような運動はします。それはランニングやストレッチなど基本的なもの。野沢温泉の練習に何か特色があるとすれば、スモールヒルにはレールがないんですよ。踏み切りの先っちょに杉の葉を差して、助走はそこをめがけて滑っていく。ちゃんと自分で滑ってこないと、違うところにいっちゃうんです」
助走路に2本の溝を作り、そこにスキー板をはめて滑り降りるのではなく、平らな雪面の上を自分でコントロールしてまっすぐ滑り降りる。現在、「足裏」を最大のチェックポイントとしている丸山の原点はそこにあるのかもしれない。
中学まではジャンプと並行してクロカンも
長野県は中学まではクロスカントリーも並行して行うのが強化の基本で、誰もがジャンプだけでなく複合の選手として育つ。杉山によれば、クロカンでの丸山は上りに強く「心臓が強い」タイプの選手。村のロードレース大会やクラブ内のランニングもすごく速かったという。
土日の練習になると昼休みが2時間ほどあり、子どもたちはアルペンをやりに行くのが常だった。村から無料のリフト券が配られていて滑り放題。どちらかと言えばしんどい持久系のクロスカントリーに比べ、アルペンはみんな嬉々として滑りに行き、午後の練習が始まるまでに戻ってこないことも多々あった。

