Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
[新エースの道程]丸山希「ゼロから恐怖心を乗り越えて」
posted2026/02/07 09:00
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
JIJI PRESS
スタートゲートを出て助走姿勢に入った。高さ133mの大倉山ジャンプ競技場。遠くには札幌の街が見える。バランスよく体重を乗せて、安定したアプローチが組めた感覚があった。板が走り、時速90km近くまで加速する。その流れのままに空中に飛び出した。踏み切りでの力の伝わり方、方向性も悪くない。スキー板で風を感じながら、飛距離はぐんぐんと伸びていく。
「自分が飛んできた中で一番いいジャンプかもしれない」
そう思える飛躍だった。K点を越え、やがてランディングバーンが近づいてきた。
丸山希には、その先の一瞬の記憶がない。
気づくとランディングバーンに倒れていた。トレーナーがスキーを外してくれている。腕は上がらず、肩が痛い。そのときは足よりもそっちの方が気になっていた。
2021年10月の全日本選手権、丸山は1本目に129.5mの大ジャンプを見せたものの、着地で転倒。左膝の前十字靭帯や半月板を損傷する大ケガを負った。当時23歳。W杯では表彰台に迫るような成績を残し始め、五輪出場が見えていた。しかし、4カ月後に迫っていた北京五輪への道はここで断たれた。
都内で手術を受け、最初は階段の昇降もままならなかった。「この足ではどうやっても金メダルという自分の目標には届かない」という現実を突きつけられたことで、まだ残っていた悔しさに区切りをつけることができた。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り: 2658文字
NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。
