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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト6位→トミー・ジョン手術から侍ジャパンへ…高校時代は甲子園出場ナシ「寮で一人で泣いていました」超無名の高校生がWBC初選出を掴むまで
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2026/01/29 06:02
球界を代表する投手のひとりとなったロッテの種市篤暉。ドラフト下位指名からトミー・ジョン手術も経験するなど波乱万丈の経歴でもある
日本プロ野球を代表する存在にまで台頭した今でも、そういうところは変わっていないという。
「このオフに、高校時代に一緒にやっていた後輩たちが、種市の家に遊びに行ったらしいんです。その中の一人が、こんなこと言っていました。『種市さんぐらい、プロ野球選手らしくないプロ野球選手もいない。それっぽいオーラみたいなのがぜんぜんなくて、ほんとに<普通の人>。街を歩いていても、電車乗っても、誰も気がつかないんですよ』ってね、笑っていましたよ」
種市篤暉、2年目の2018年。
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彼は、夏の「フレッシュオールスター」に、イースタン・リーグ選抜の一員として選ばれた。
試合が行われた青森・弘前市運動公園野球場。テレビ中継の解説の仕事で、私もたまたま、球場に来ていた。試合前、グラウンドに現れたイースタン選抜の選手たちが、芝生の上でアップを始める。
と、うつぶせになった種市投手と目が合った。その瞬間、パッと起き上がると、結構な距離があったのに、ダグアウト前にいた私のところへ走ってきてくれた。
記者の心に残る「おかげさまで…」の言葉
「立派になったねぇ」と迎えたら、
「おかげさまで、フレッシュオールスターに出していただけるぐらいになれました」
目の強さ、確かさは、高校時代そのままだったが、なんだか温かいものがあとに残っていた。
アマチュア時代に取材で会って、その後の再会で「おかげさまで」と言ってくれた選手は、今シーズン広島でプロ16年目を迎える秋山翔吾選手と種市篤暉投手。これまで、この2人だけだ。
彼なら、きっと大きな存在になれる。私がひそかにそう確信するのは、こういう瞬間なのだ。

