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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「中村憲剛の脳みそがほしい」日大藤沢・中村龍剛(17歳)はなぜ“偉大な父”を重圧と感じないのか? フロンターレ落選から始まった「父の観察」
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安藤隆人Takahito Ando
photograph byEtsuo Hara/Getty Images(Kengo),Naoki Morita/AFLO SPORT(Ryugo)
posted2026/01/21 11:06
父・中村憲剛を彷彿とさせる姿が話題を集めた日大藤沢・中村龍剛(2年)。選手権では“等々力”のピッチに立った
「フロンターレのエリートスクールのセレクションがあったので応募したんです。でも、3次セレクションで落ちてしまって……」
セレクションを受けたのは興味本位だった。だが、不合格という現実を突きつけられた瞬間、危機感が生まれた。
「お父さんは僕が寝る時までずっと身体のケアをしていた。セレクションに落ちてから、それが『良いパフォーマンスを出すためにやっていて、とても意味があることなんだ』とわかるようになった。だから、具体的に何をしているのか、より注目するようになりました」
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どのタイミングで炭水化物やプロテインを摂るのか。朝起きてから何をしているのか。父の一挙手一投足をプレーヤー目線で観察した。テレビやパソコンで自分のプレーや対戦相手の映像とひたすら向き合う父の“一人分析会議”は何度も目にしてきたが、繰り返し父が見ているのはどのシーンなのか、遠目から覗くことも少なくなかった。たまに一緒にボールを蹴る時は、自分なりにアレンジをしてボールを蹴り返した。
「お父さんはちゃんとボールが止まるし、すぐに蹴ることができる位置に必ず置く。『何でこんなに止まるんだろう』と自分なりに一回考えてから、『どこに当てたら自分は一番止めやすいかな』と自分に置き換えてやってみる。それでも分からない時はお父さんに聞くことをずっとやっていました」
板倉滉、田中碧の様子も気になるが…
Jリーグ観戦でも意識が変わった。キックオフまでスタジアムの広場や飲食ブースなどで時間を潰していたが、父がどんな準備をしているか知りたくなった。試合1時間前にはスタンドに足を運び、ストレッチの仕方やパス・キックの感触を確かめる所作を観察し続けた。「いま僕が試合前のアップで実践していることは、ここで焼き付けたお父さんの姿を参考にしているんです」。
父に連れられて訪れた川崎のクラブハウスでも、視線は自然と“中村憲剛”に向く。
「(板倉)滉選手や(田中)碧選手が黙々と器具を使ってトレーニングをしている。プロテインを飲むタイミングや、リラックスするところと集中するところのメリハリが凄かった。同時に気になったのが、お父さんはどう接しているのだろうということ。年下の選手ばかりなのに偉ぶっていないし、スタッフの人たちに対してもすごくナチュラルに接していて、あまり他人に威厳を見せない『いじられキャラ』のままだった。“父親”ということを抜きにして『いいベテランの選手だな』と思いましたし(笑)、僕も周りの人たちに対して『こうありたい』と思ったんです。そこから自分のチームメイトとの関わり方が変わった気がします」


