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ボクシングPRESSBACK NUMBER
英国人記者も驚いた…中谷潤人なぜ大苦戦?「パンチが効かないなんて…」井上尚弥戦へ改善すべき“悪癖”「ナカタニは時々、リスクを取りすぎる」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/12/30 17:02
スーパーバンダム級転向初戦で判定勝ちを収めた中谷潤人(27歳)。しかし、セバスチャン・エルナンデスに思わぬ苦戦を強いられた
イノウエの次の相手の有力候補であるナカタニはセバスチャン・エルナンデス戦で大苦戦を味わった。私は7-5(115-113)でナカタニの勝利と思ったが、非常に難しいラウンドがいくつもあった。正直、6-6(114-114)でもおかしくないし、7-5でエルナンデスという見方も成り立つ。
この試合には本当に驚かされた。いくつか意外な点があった。ファイトウィークを通して、エルナンデスはナカタニに過剰に敬意を払っているように見え、少し気圧されている印象もあった。眠れていない、精神的に自信を失っている、という噂もあった。
実際、試合序盤はあまり何もしていなかった。それが3ラウンドに入って突然、ナカタニにプレッシャーをかけ始め、手数を出してきた。まるで『ジュントのパンチを数ラウンド受けたが、まだ立っている。さあ自分の番だ』と言わんばかり。その後、彼はナカタニに地獄を見せた。本当に厳しい試合になった。
“逃げ道”を見つけられなかった
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私の見方では、ナカタニの何かが極端に悪かったわけではない。驚いたのは、そのパンチ力がほとんど効果を示さなかったことだ。このメキシコ人選手がパンチで効かされた場面を一度も思い出せない。グラついた場面はなかったし、前進を止めることもなかった。
ナカタニはイノウエ同様、階級を上げてもパワーの効果を持続してきた選手だ。だから一発当たればエルナンデスが揺らぐと思っていたが、それがまったくなかった。エルナンデスがあまりにもアグレッシブに前へ出てきたため、ナカタニは逃げ道を見つけるのに苦労していた。どこへ動こうとしても、彼がそこにいた。
結果として、ナカタニ自身が『この相手を倒すには打ち合うしかない』と受け入れたように見えた。そして実際、そのように戦った。
後半もナカタニのパンチの方がややクリーンだったとは思う。エルナンデスは元々粗いスラッガーだが、終盤は仕事の質が落ちたものの、それでも手数は保ち続けた。本当に紙一重の戦いだった。言えるのは、この勝利でナカタニの評価はやや下がり、エルナンデスのそれは大きく上がったということ。負けはしたが、“価値のある敗戦”が存在するとすればエルナンデスにとってのこの試合だったのだろう。

