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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「井上尚弥は退屈そうだった」英国人記者が見た“敗者ピカソの誤算”「あまりに消極的で…」圧倒的な実力差、なぜKO決着にならなかったのか
posted2025/12/30 17:01
アラン・ピカソに判定勝ちを収めた井上尚弥。試合後は「疲れました」と本音も漏らした
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は12月27日、サウジアラビアのリヤドで行われたアラン・ピカソ(メキシコ)との防衛戦で3-0判定勝ちを飾った。“モンスター”はデビュー以来、無傷の32勝(27KO)。来年5月に実現が期待される中谷潤人(MT)との日本人スーパーファイトに大きく近づいた。
ただ、9月のムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦に続き2試合連続の判定勝ち。井上らしい豪快なフィニッシュは見せられず、試合後は本人も「今夜はよくなかった」と反省しきりだった。
リングマガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏はこのイベントのためにサウジアラビアに渡航し、リングサイドから戦況を見守った。2019年のノニト・ドネア(フィリピン)第1戦、アフマダリエフ戦など複数の井上戦を取材してきたグレイ氏は、今戦をどう見たのか。試合後、じっくりと語ってもらった(以下、グレイ氏の一人語り)。
井上尚弥はなぜスローダウンした?
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最初の6ラウンドについて言えば、イノウエは本当に素晴らしかった。動きは非常にシャープだったし、パンチの切れ、スナップも抜群だった。ギアを何度か上げる場面もあって、ああいう状態の彼を見ているのは純粋に楽しかった。初回から6ラウンドまでの間に彼が見せた動きには、リングサイドから何度もどよめきが起きていた。
一方、ピカソからの反撃はほとんどなかった。あまりにも消極的だったので、王者としてはカウンターを取る材料が何もなかったし、脅かされることも一切なかった。“モンスター”は試練を求めていたが、それを得ることはできず、結果的に、後半はただ“やるべきことをこなしている”ような形になった。
そんな流れから、試合の中盤を過ぎたあたりからまるでイノウエが少し退屈してしまったかのように見えた。的を外すジャブが増え、コンビネーションも全体的にスローダウンした。ターゲットを打ち続けることに飽きてしまい、オートパイロットのような状態。“Aゲーム”ではなかったのは確かだ。

