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開幕投手→先発失格→クローザー、難病との戦い「全部やった」…前DeNA三嶋一輝が構想外から現役続行めざすわけ「嫁さんが“もっと粘って”って」
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石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/29 17:02
先発からリリーフに転向し、2020年、21年にはクローザーも務めた三嶋。再びその勇姿をNPBの舞台で見ることはできるのだろうか
自分、すごい生きているな
「でも、その苦しみさえも自分にとっては必要なことでしょうし、これからの人生のためになるものなんだろうなって感じてはいましたよ。だから正直、『すごい生きているな!』って、実感しながら毎日を過ごしていたんです」
照れる様子も見せず、はっきりと言うと三嶋は顔を輝かせた。
「まあ、高校大学時代からそうなんですよ。なにかしらいいことや成功を収めると、次の瞬間に絶対に試練が訪れる。プロになってからもその連続で、いい経験をすると必ず壁がやってくる。まあ正直、疲れるんですけど、もう慣れましたし、本当、いろいろ学びましたよ」
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人生は甘くないですねえ、と伝えると「本当そう。でもね、だから思うこともあるんですよ」と、三嶋は返し、つづけた。
「今は自分にとって転換期っていうんですかね。今までは大学、プロと求められて野球をやってきました。しかし現状はなにも決まっていないし、先が見えない。これまでこういう状況ってほとんどなかったので、どうなるか楽しみではあるんです」
いや、難病という先の見えない状況はもう経験しているではないか、と言おうと思ったが、楽しそうに話している三嶋の様子を見て言葉を飲み込んだ。この窮地であっても前を向けるメンタルの太さ。これが三嶋の強さの源なのかもしれない。
妻からの異議申し立て
「でも本当のことを言うとね。じつは……」と、三嶋は独り言のように話し出した。
「最初は11月いっぱいという期限を決めて、もしNPBからオファーがなかったら引退しようって思っていたんですよ。僕にも家族がいますし、来年なにをやるのかしっかりと決めて皆を安心させるのが大事だと思って」
至極まっとうな考え方だろう。しかし、その三嶋の考えに異議を唱えたのが、妻だった。

