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開幕投手→先発失格→クローザー、難病との戦い「全部やった」…前DeNA三嶋一輝が構想外から現役続行めざすわけ「嫁さんが“もっと粘って”って」
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石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/29 17:02
先発からリリーフに転向し、2020年、21年にはクローザーも務めた三嶋。再びその勇姿をNPBの舞台で見ることはできるのだろうか
国指定の難病との戦い
このまま順調にキャリア晩年を過ごすかと思われたが、ここで三嶋は野球人生最大の悲運に襲われる。オフに4年契約をして挑んだ2022年、年明けから体に違和感をもっていた三嶋は、春先に国指定の難病である黄色靱帯骨化症と診断された。放っておけば歩行困難など日常生活にまで支障をきたしてしまう重い病気だった。過去、プロ野球界で発症した選手は何人かいたが、あまりにも前例が少ない上に、元に戻る保証もなかった。
そこでも三嶋は諦めることなく、自らいろいろな医師にオピニオンを求め、ついには肉体的な負担の少ない内視鏡による前例のない新しい術式でオペをし、懸命のリハビリの上、翌2023年に復帰を果たしている。
ちなみに三嶋に施された術式は『MISHIMA手術』として世界の医学界にも紹介され、その後、野球選手だけにかぎらず、同症状で苦しむ人たちの大きな助けにもなっている。
「全部やった」13年間
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復帰した2023年は、4試合を投げ3勝を挙げるなど試合の流れを変える仕事をしたが、夏場に差し掛かるぐらいから身体の踏ん張りが利かず調子を落とし、ファーム行きになってしまう。そして2024年、2025年と状態がいいときもあったが、出力が上がり切らず、なかなかチャンスに恵まれないまま、三嶋はDeNAを去ることになった。
「全部やった」13年間を、三嶋は遠くを見ながら振り返る。
「よく選手を引退された方は『あっという間だった』なんて言いますけど、僕の場合はすごく長かったんですよ。ただ野球をやっているだけなんだけど、苦しいことやうれしいことがいろいろ起こったし、たくさんの人と出会ったりもしました。とにかく新しい経験ばかりが次々と積み重なっていくし、そういう意味で長かったんですよ」
マンネリ化が許されない激しい時の流れ。当然、喜びよりも苦しみの方が多い日々だったと三嶋はつづける。

