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巨人女子チーム→米女子・ロサンゼルスからドラフト指名…島野愛友利(21歳)が明かす大谷翔平への”共感”「本当にありえない」でも「投打で出場して…」
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山口史朗(朝日新聞)Shiro Yamaguchi
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/28 17:02
アメリカ女子野球プロリーグ(WPBL)のドラフト会議でロサンゼルスから指名を受けた巨人女子チームの島野愛友利
「1試合に対して、たぶん最高で7万円くらい。それだけで生活できるような金額ではないんですけど、選手の価値に対してサラリーが発生するのは大きな一歩だと思った」
日本のプロ野球球団では、巨人、阪神、西武が女子チームを持つが、いずれもクラブチームという立ち位置だ。
島野自身も、巨人ではアカデミーのコーチという立場で給料をもらっていた。安定した生活を保障してもらいながら野球ができることへの感謝の思いは強い。
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それに比べて、アメリカのリーグは2カ月足らずで終わり、残りの期間に何か保障があるわけではない。
WPBL挑戦…今季、自分に課した目標
それでも、決断に迷いはなかった。春先には巨人にWPBL挑戦の意向を伝えた。そして、自らに今季の目標を課した。
「東京ドームでホームランを打つ」
女子の巨人と阪神は23年から、1年に計2試合、東京ドームと甲子園で交流戦を行っている。
島野は23年、右ひざのけがで出場できず、昨年は納得いく活躍ができなかった。
「今年は打てるゾーンを広げようと練習してきた。今までは『これをされたら崩れてしまう』という弱点が多かったんですけど、弱点と向き合って潰していきました」
25年7月20日、その日は訪れた。
「5番・一塁手」で先発した島野は、2回に中前安打を放つと、6点を追う6回、浮いた変化球を完璧にとらえた。打球は高々と上がり、右翼後方のラッキーゾーンへ飛び込んだ。
交流戦3年目にして、巨人女子チームとして初の本塁打だった。
普段はあまり感情を派手に表さない島野が、満面の笑みで跳ねるように仲間たちの祝福を受け、抱き合った。
「ドームでの試合が1年に1回しかない中で、『この試合で打ちたい』とはっきり目標を決めて進んできた。積み重ねてきたものが出たのはすごいうれしかったし、自信にもなりました」
大谷翔平と同じロサンゼルスの街に
プレー動画を送付することで、WPBLのトライアウトに合格していた島野は11月20日、オンラインで配信されたドラフトでロサンゼルスのチームから指名された。
ロサンゼルスには、大谷翔平が所属するドジャースがある。言うまでもなく、投打の「二刀流」として道なき道を切り開くスーパースターと、同じ街に身を置くことになる。
今季、ドジャースのワールドシリーズ連覇に貢献し、3年連続のリーグMVPに輝いた大谷の活躍を島野もいちファンとして、いち野球選手として見つめていた。


