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「男子に負けるのは本当に悔しかった」巨人女子チーム・島野愛友利(21歳)が語る女子野球パイオニアへの道<米女子プロリーグ・ロサンゼルスからドラフト指名>
posted2025/12/28 17:01
アメリカ女子野球プロリーグ(WPBL)のドラフト会議でロサンゼルスから指名を受けた巨人女子チームの島野愛友利
text by

山口史朗(朝日新聞)Shiro Yamaguchi
photograph by
Yuki Suenaga
米女子プロリーグのドラフトで指名
カメラのレンズをまっすぐに見つめるまなざしに、力が宿る。12月上旬、島野愛友利は深いグリーンのスーツを華麗に着こなし、読売ジャイアンツ球場での取材の場に現れた。
背筋をぴんと伸ばし、相手の目をしっかりとらえながら一つひとつの質問にこたえていく。その姿は、7年前からのたしかな成長を感じさせた。
この秋、島野の名前が再び日本の野球界をにぎわせた。2026年、アメリカで72年ぶりによみがえる女子のプロリーグWPBL(Women's Pro Baseball League)のドラフトが11月20日に行われ、ロサンゼルスのチームから指名されたのだ。
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「最初にこの話を聞いたとき、すごく興味がわいて。これがひとつの道になるんじゃないかと思いました」
「ジャイアンツカップ」にエースで優勝
島野が初めて、世間から注目されたのは18年夏、中学3年生のときだった。
シニア、ボーイズ、ヤングなど、中学硬式リーグの上位チームが集う最高峰の「ジャイアンツカップ」。この大会で優勝した大淀ボーイズ(大阪市)のエースナンバーを背負ったのが、島野だった。
少人数のチームなら女子が試合に出るのも珍しくない。が、大淀ボーイズはこのとき、44人の大所帯。チームメートには現在プロ野球の巨人でプレーする京本眞、この秋のドラフト会議で広島から3位指名を受けた勝田成(近大)もいた。
島野は特段、体が大きいわけではない。それでも、しなやかな投球フォームから、当時の最速は124kmを誇った。制球が良く、大きく縦に割れるカーブも武器だった。
「重心を低くして、沈み込むような投球フォームを意識しています。キレのある直球を投げたい」。そう話す中学3年の島野は、まだ人見知りを感じさせた。表情はあどけなく、視線も記者の目ではなく、下に落としていた。
ただ、負けん気の強さは人一倍だった。
学年が上がるにつれて感じた“男子との差”
3人きょうだいの末っ子。2人の兄の影響で「物心ついたときから野球が身近にあった」。両親とともに兄たちがいるチームの応援にいくうち、小学2年生から野球を始めたのは自然な流れだった。
5つ上の長男・凌多さんは、大阪桐蔭高で甲子園に出場し、龍谷大では主将を務めた。1つ上の次男・圭太さんは履正社高(大阪)から帝京大へ進み、今年は鷺宮製作所でルーキーながら遊撃手のレギュラーとして都市対抗と日本選手権に出場した。
トップレベルでプレーする兄たちから練習方法などを教わりながらメキメキとうまくなった。


