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「男子に負けるのは本当に悔しかった」巨人女子チーム・島野愛友利(21歳)が語る女子野球パイオニアへの道<米女子プロリーグ・ロサンゼルスからドラフト指名>
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山口史朗(朝日新聞)Shiro Yamaguchi
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/28 17:01
アメリカ女子野球プロリーグ(WPBL)のドラフト会議でロサンゼルスから指名を受けた巨人女子チームの島野愛友利
小学校から中学へ、中学から高校へ、そして高校からその先へ。島野の進路選択は常に、暗闇から一筋の光を探してつかむような作業だった。
野球を志す女子が、胸を張って目指せるステージ。それを常に求めてきた。
甲子園での夢の瞬間が終わると、次は大学か、クラブチームか。それとも、再び男子に混ざってプレーするか……。
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プロや社会人、東京六大学など、男性には目指しがいのある華々しい舞台がある。それに比べて、「女子には目指す場所がない」。子どもの頃からずっと寂しさを感じていた現実に、改めて直面した。
強豪の男子野球部がある大学を中心に、進路を考えていたとき、新たな選択肢が浮上した。それが「巨人」だった。
ジャイアンツが女子チームを立ち上げる。話を聞いてから決断までにそう時間はかからなかった。初代の4人のメンバーに、島野も名を連ねた。
ジャイアンツの入団会見で口にした“覚悟”
21年12月8日、東京・両国国技館で開かれた巨人のファン感謝イベントで、入団発表が行われた。
男子と同じ、伝統のユニホームに袖を通した島野は「(球団には)新しい一歩を踏み出していただいた。女子野球にとってありがたいことです」と感謝の言葉を口にした。ただ、引き締まった表情で、こうも語った。
「女子野球の大きな責任を背負って、ユニホームを着ている」
それまでは「女子野球にも活躍の場を」と願う立場だった。しかし、これからは後に続く野球少女たちのために、自分自身がその未来を切り開いていく――。そんな強い覚悟の表れのような言葉だった。
1年目は4人での活動だったため、チームは組めない。それでも2月には「本家」のジャイアンツの春季キャンプにまざって練習したり、シーズン中はジャイアンツ球場での二軍戦でボールパーソンを務めたりと、プロの男子選手たちのプレーに間近で触れた。
「華やかに見える部分の裏で、すごく地道にやられているのを見られたのは、自分自身が成長する上で大きかったです」。ジャイアンツという環境で得たものは大きかった一方で、選手生命を脅かす試練にも直面した。

