獅子の遺伝子BACK NUMBER

〈セ独走の阪神が日本シリーズで玉砕〉両リーグを知る頭脳派コーチが語るセパ格差、投高打低…現場のリアル「打ち勝つ、ではなく打てば勝つ時代」 

text by

佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/12/25 11:09

〈セ独走の阪神が日本シリーズで玉砕〉両リーグを知る頭脳派コーチが語るセパ格差、投高打低…現場のリアル「打ち勝つ、ではなく打てば勝つ時代」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

日本シリーズではソフトバンクが阪神に圧勝した

――実際のところ、なぜあのような順位になったのでしょう?

仁志コーチ パ・リーグのバッテリーは、ピッチャーの特長を活かしたり、強いボールをどんどん投げ込んだりと攻めのスタイルなので、短期決戦はやはり強いですよね。セ・リーグのチームは、2カード、3カードと勝負を重ねていく中で攻略していくというスタイルなので、受け身なんです。一発勝負で3試合だけとなると、圧倒されたまま終わってしまう。

セ・リーグ圧倒の阪神がなぜ完敗?

――同じく短期決戦の日本シリーズも、ソフトバンクが阪神を4勝1敗で退けました。

ADVERTISEMENT

仁志コーチ 個々のピッチャーで言えば、むしろ阪神の方が良かったんじゃないかと思いましたけどね。ただ、ソフトバンクは本当に選手層が厚いので、色々なバリエーションがあるピッチャーがいるし、強いボールを投げなければ生き残っていけない。バッターも同じで、そもそも使われる選手が選抜されていますからね。打線に関してはやはり、DH制が大きいと思いますよ。

――阪神はDHの人選に苦しんだところもありますね。

仁志コーチ パ・リーグはスタメン以外に、いわば“打つだけでもいいですよ”的な打者が2人くらい残っていますが、セ・リーグはそういう編成を組んでいないのでDHの“駒”が1、2枚少ない。DH制が有利に働かないんです。

――2027年シーズンからセ・リーグもDH制を採用することが決まりました。これによって「セパ格差」は変化すると思いますか?

仁志コーチ 大きく変わると思います。今までセ・リーグはピッチャー交代のタイミングが打順の関係で前倒しになって、継投がスクランブルになることも多かった。DH制となれば、ある程度計算して継投できるのでピッチャーも能力が発揮しやすいでしょう。スタメン以外で打力のある選手を置けることも大きい。これまでセ・リーグのチームは打つことに特化した選手を生かせなかったので、ある程度打てて守れて足も使えてというバランス型の器用な選手が多かったように思います。今後はチーム編成や育成方針も大きく変わってくるでしょう。

3割打者は3人だけ「投高打低」なぜ?

 もう一つ、“格差”と言えば近年のプロ野球界は「投高打低」が叫ばれている。投手の平均球速が軒並み上がっている中で、その攻略に打者陣が苦戦。今シーズン、規定打席到達者で打率3割を超えたのがパ・リーグは首位打者を獲得したソフトバンクの牧原大成(.304)、セ・リーグは広島の小園海斗(.309)、巨人の泉口友汰(.301)だけだった。

【次ページ】 「投高打低」時代を勝ち抜くチームの条件

BACK 1 2 3 NEXT
#埼玉西武ライオンズ
#読売ジャイアンツ
#横浜DeNAベイスターズ
#福岡ソフトバンクホークス
#阪神タイガース
#仁志敏久
#西口文也

プロ野球の前後の記事

ページトップ