Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

[イチローの言葉を胸に]シアトル・マリナーズ「24年ぶりの大航海」

posted2025/12/31 09:00

 
[イチローの言葉を胸に]シアトル・マリナーズ「24年ぶりの大航海」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

チームの顔はイチローさんを慕うフリオ・ロドリゲス。'25年は32本塁打、30盗塁

text by

小西慶三

小西慶三Keizo Konishi

PROFILE

photograph by

Yukihito Taguchi

イチローが新人だった2001年以来の地区優勝を果たし、球団初のワールドシリーズ進出まであと1勝に迫った。チームが結束した背景を、日本人トレーナーが明かす。

「Seize The Moment(その瞬間を、つかみ取れ)」

 2025年8月9日、イチローさんがマリナーズ球団の永久欠番セレモニーのスピーチで現役選手たちに熱く語りかけた。プレーオフ進出争いが佳境を迎えるこの先、ヒーローになるチャンスはやってくる。だからその瞬間を逃すな、との檄だ。地元放送局の中継映像には、壇上のレジェンドを食い入るように見つめるマリナーズの選手たちが大映しになっていた。

 '25年のマリナーズはオールスター前後まで勝率5割をやや上回る状態で一進一退していたが、このイチローさんの米野球殿堂入りと永久欠番を祝うイベントが続いた8月5日からのホーム6連戦を全勝し、8月12日に敵地でのオリオールズ戦にも勝ってア・リーグ西地区首位に並んだ。その後、“Seize The Moment”は球団公式Xのハッシュタグにも採用され、チーム関係者や地元ファンの間でスローガンとなった。イチローさんの背番号51は日本人としてメジャー球団で初めて永久欠番に制定された。その言葉はマリナーズの後輩たちとファンを繋ぐ鎖となった。

 マリナーズは現存のMLB30球団で、一度もワールドシリーズに進んだことがない唯一のチームだ。創設は1977年。もう“新興チーム”とは呼べないその歴史には、弱小球団の暗いイメージがずっと付きまとっていた。過去にプレーオフ進出を継続して狙えるレベルにあった時期は1990年代中盤から2000年代序盤の数年間のみで、それ以降は長い低迷期からなかなか抜け出せていない。しかし最近3年は層の厚い投手陣を中心に、再びポストシーズン常連となり得る力を蓄えてきた。

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り: 2750文字

NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。

関連記事

#イチロー
#シアトル・マリナーズ
#山本和広
#ジェリー・ディポト
#カル・ローリー
#フリオ・ロドリゲス
#エウへニオ・スアレス
#ジョシュ・ネイラー
#ダン・ウィルソン
#ルイス・カスティーヨ
#ローガン・ギルバート

MLBの前後の記事

ページトップ