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「悩んでいた期間が足を引っ張っちゃったかな…」173cmの長身で“世界陸上でも注目”女子走高跳・高橋渚(25歳)が明かした「大舞台までの苦難」―2025年下半期読まれた記事
posted2026/01/01 06:01
セカンドベストとなる1m88cmの高さを3度目の試技で成功させた女子走高跳の高橋渚。今季は春先からスランプに苦しんだが、大舞台で力を発揮してみせた
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
Kiichi Matsumoto
2025年の期間内(対象:2025年9月~12月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。陸上部門の第4位は、こちら!(初公開日 2025年9月24日/肩書などはすべて当時)。
充実感と、悔しさと。ちょうど、その中間のような表情だった。
「悩んでいた思いも、全部ここのためと思ってやったんですけど……やっぱり悩んでいた期間がちょっと足を引っ張っちゃったかな」
東京世界陸上に出場した女子走高跳の高橋渚は、自身初となる世界大会での跳躍をそう振り返った。
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日本人にとって同種目では実に6大会ぶりとなる出場。残した記録は1m88cm、順位は総合で22位タイ。地元開催の大舞台というプレッシャーのかかる場面で、セカンドベストの高さである1m88cmをクリアしたことは決して簡単なことではない。しかも追い詰められた3回目での成功で、満員の観客に対して勝負強さも見せた。
一方で、続く1m92cmを超えていれば、もしくは1m88cmを1回目で成功していれば決勝進出だっただけに、目の前にあった決勝という夢舞台が手の中からすり抜けたような感覚もあったのだろう。その複雑な感情が表情にも現れていた。
実は今季の高橋がここに至るまでには、本人の言葉を借りれば「悩んでいた」期間があったという。
目指していた「1m90cm」という壁
「まずは1m90cmを跳ばないと話にならないので――」
パリ五輪を翌年に控えた2年前から、高橋はその言葉を繰り返していた。
昨今、日本の女子走高跳という競技は停滞期にあった。日本記録はいまから20年以上前の2001年に記録された1m96cmがいまだに残り、女子陸上競技の主要種目では最古の記録となっている。
