第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER

「強い東京国際大学のイメージを取り戻す」エースにして主将の菅野裕二郎が心に誓う2年連続シード権獲得 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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posted2025/12/23 10:00

「強い東京国際大学のイメージを取り戻す」エースにして主将の菅野裕二郎が心に誓う2年連続シード権獲得<Number Web> photograph by Getsuriku

前回の箱根駅伝9区で区間3位の力走を見せた菅野裕二郎(左)

 菅野が立ち直ったのも、自分の可能性を信じたからだ。大志田氏が退任する際、「1年でいなくなる形になってしまって申し訳ない」と頭を下げられた。その時、菅野はこんなことを考えたという。

「逆に僕たちがそういう言葉を言わせてしまったんじゃないかって、申し訳ない気持ちになりました。高校3年生の時にケガをして、僕はけっこう腐っちゃったんですけど、それでも大学に迎え入れてくれたのが大志田さんと中村さん。高校の恩師も最後まで面倒を見て下さいましたし、それこそ両親にもずっと支えてもらいました。大学の同級生も僕が1年生の時に『走れるようになるのを待ってるよ』と言ってくれて、そういった言葉に何度も救われてきた。だからこそ、感謝の気持ちは常に持って走りたいです」

 回り道をした分、人としての器は大きくなった。大学2年生の秋頃から徐々に走れるようになると、3年目にはハーフの自己ベストを1時間01分41秒にまで伸ばした。高校生の頃からの憧れだった箱根駅伝は、実際に走ると夢のような場所だったと話す。

「スタートラインに立った時、感極まって泣きそうになったんです。高校入学のときにバスケか陸上競技かで悩んで、陸上競技を選んで良かったなって。20km地点で応援に駆けつけてくれた家族の姿を見つけた時、思わずガッツポーズが出ましたね」

エースの気概

 自他共に認めるエースとなった今季は、とりわけスピードと持久力を磨くことに専念してきた。最後の箱根駅伝で自身が走るのは往路の主要区間と見定め、そこで各大学のエースたちとしっかり競り合うためだ。中村監督代行からは「2区の準備もしておくように」と言われているが、本人は「3区も走ってみたい」と異なる区間にも意欲を見せる。

「やっぱりチームのことを考えると、リチャードが2区を走った方が良いかもしれない。その場合は僕が3区に行って、流れを途切れさせないようにしたい。全体的に下り基調のコースだし、走っていて楽しそう。堂々と笑顔で走り抜けるイメージはできてます」

 前回はエティーリの快走で2区終了時点で2位につけたが、3区以降の4年生が踏ん張りきれず、往路を終えた時点で11位にまで順位を下げた。復路で盛り返し、留学生頼みのチームではないことを証明できたのは良かったが、2年連続で同じ轍を踏むわけにはいかない。

 チームの目標はシード権の死守。前回6区区間10位の中山拓真、10区区間6位の大村良紀ら最上級生に力のある選手が多く、11月に10000mの自己ベストを28分17秒70まで伸ばした小柴裕士郎(2年)ら頼もしい新戦力の台頭もある。今季はまだ駅伝で望むような結果を残せていないが、この目標は十分射程圏内と言えるだろう。

 日本人エースとして、シード校の主将として、菅野もこう意気込む。

「今回も絶対にシードを獲って、チームの過去最高順位である5位より上も諦めずに狙っていきたい。強い東国大のイメージを、僕たちの代でもう一度取り戻したいです」

 泣いても笑っても、4年生にとっては最後の箱根駅伝だ。主将が誓う「恩返し」の走りで、チームを2年連続のシード権獲得に導けるだろうか。

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