「強い東京国際大学のイメージを取り戻す」エースにして主将の菅野裕二郎が心に誓う2年連続シード権獲得

　最強にして最速──。

　東京国際大学のエースと言えば、5000mと10000m、そしてハーフマラソンの3種目で日本学生記録を持つ、ケニア人留学生のリチャード・エティーリ（3年）を誰もが思い浮かべるだろう。

　では、それに続く日本人エースは誰なのか。

　今季、その役割を担うのが主将の菅野裕二郎（4年）である。前回の箱根駅伝では9区を走って区間3位。確かな実力を示し、シード権獲得の立役者のひとりとなった。

　2区で12人抜きして区間新記録を打ち立てたエティーリと比べると、どうしても存在感は薄くなるが、本人は冷静にその実力差を受け止めている。

「なかなか同じようなレベルでは走れないので。ただ、一緒に走る機会は少なくないですし、そもそも東国大を選んだ理由のひとつは強い留学生がいたから。今のうちから世界レベルの選手と一緒に走れるのはプラスしかないと思ってます」

前回の箱根駅伝で2区を務め、区間1位の走りで実力を見せつけたリチャード・エティーリ（先頭）　©Yuki Suenaga

　温和な表情の下に、強い負けん気を秘めている。

　菅野は高校時代から名の知れた選手だった。学法石川高では同級生の山口智規（早稲田大学）と双璧を成し、インターハイなど全国の舞台で活躍。だが、高校最後の全国高校駅伝都大路を前に大きく躓いてしまう。直前の記録会で足を痛め、目標の舞台に立てなかったのだ。

　当初は捻挫と考えていたが、実際には疲労骨折をしていて、初期の対応を見誤ったために治療が長引いた。大学進学後の1年間をほぼリハビリに費やし、その後もなかなか調子が上がらなかった。

「大学2年目も箱根駅伝予選会のメンバーに絡めなくて、チームは本選の切符を逃しました。チームの力になれなかったことがすごく悔しかったですし、高校の同級生が箱根駅伝を走っているのを見て、羨ましいなと思う気持ちもありました」

恩師の退任という試練

　この頃、チームもまた試練の時を迎えていた。駅伝部を創設し、2021年には初出場の出雲駅伝で初優勝を飾るなど、東国大を強豪校へと育て上げた大志田秀次監督が突如退任。大志田氏にスカウトされた学生も多く、チームには動揺が走った。コーチとして二人三脚でチーム作りに携わり、昨秋から指揮を執る中村勇太監督代行は今の4年生の気持ちをこうおもんばかる。

「大志田さんを慕って来た学生が大半でしたので、気持ちを切り替えるのは難しかったと思います。実際にそれがショックで部を辞めた子もいました。ただ、だからといって環境を嘆いたり、周りのせいにしてしまったら力は伸びない。駅伝でも追いかけることもあれば、我慢を強いられる時だってあります。どんな状況でも自分の力をしっかり発揮できる選手になろうということは、彼らに言い続けてきました」

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