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広岡達朗の長女が重要証言「あんな偏食家はいません」じつは『タブチくん』も読んでいた“やさしいパパ”の素顔「あえてヒールのようにふるまった」

posted2025/12/06 12:10

 
広岡達朗の長女が重要証言「あんな偏食家はいません」じつは『タブチくん』も読んでいた“やさしいパパ”の素顔「あえてヒールのようにふるまった」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

「厳格」「冷徹」といったイメージで語られがちな名将・広岡達朗。長女の祥子さんが明かす父の素顔とは

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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BUNGEISHUNJU

1978年、ヤクルトスワローズが叶えた奇跡の日本一。“冷徹な監督”は優勝未経験の弱小球団をどう変えたのか。数年にわたる取材で名将・広岡達朗の過去と現在に迫った書籍『正しすぎた人 広岡達朗がスワローズで見た夢』が発売される。家族が初めて明かす、広岡達朗の知られざる素顔とは――。同書籍より、長女の祥子さんに話を聞いた章の一部を紹介する。(全2回の2回目/前編へ)

広岡達朗は『がんばれ!!タブチくん!!』を知っていた

 祥子さんには、いしいひさいちの大ヒットマンガ『がんばれ!!タブチくん!!』(双葉社)についても尋ねた。田淵幸一、安田猛、そして広岡達朗ら、実在の人物をモデルとしたギャグマンガで、後にアニメ映画化もされている。広岡のパブリックイメージである「厳格でクール」という印象は、この作品でより一般的に、より強固になったと言えるだろう。

「そうそう、玄関に鍵をいっぱいつけていてね……」

 祥子さんは、そう切り出した。そうだ、確かにそんな回があった。帰宅後、久しぶりに単行本を取り出して確認すると、それは第二巻に収録された「忘れ物」という一編だった。

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 球場に向かう広岡。ガスの元栓を締め、ストーブの火を消し、窓が閉まっていることを確認し、「忘れものはなし、うむ」と独り言をつぶやいて、玄関に鍵をかけて家を出る。その扉にはたくさんの鍵がついている。神経質で、何事にも慎重な広岡だったが、最後のコマでは靴を履くのを忘れて裸足で家に走る彼の姿が描かれている。

 およそ45年も前の掌編をいまだに記憶していることに驚いた。それだけインパクトが強かったということだろう。

 実はそれ以前に、本人に『がんばれ!!タブチくん!!』について尋ねたことがある。私の質問に対して、広岡は「そんなマンガは知らない」と言った。構わずに私は続ける。

――銀縁の眼鏡をかけて、家では着物を着ていて、グラウンドではヤスダ君、オオヤ君に厳しく接する人物です。

「私はあんな顔をしていないし、あんなしゃべり方をしない」

【次ページ】 キノコ嫌いの広岡「あんな偏食家はいません」

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