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プロ野球PRESSBACK NUMBER
広岡達朗の長女が重要証言「あんな偏食家はいません」じつは『タブチくん』も読んでいた“やさしいパパ”の素顔「あえてヒールのようにふるまった」
posted2025/12/06 12:10
「厳格」「冷徹」といったイメージで語られがちな名将・広岡達朗。長女の祥子さんが明かす父の素顔とは
text by

長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
BUNGEISHUNJU
広岡達朗は『がんばれ!!タブチくん!!』を知っていた
祥子さんには、いしいひさいちの大ヒットマンガ『がんばれ!!タブチくん!!』(双葉社)についても尋ねた。田淵幸一、安田猛、そして広岡達朗ら、実在の人物をモデルとしたギャグマンガで、後にアニメ映画化もされている。広岡のパブリックイメージである「厳格でクール」という印象は、この作品でより一般的に、より強固になったと言えるだろう。
「そうそう、玄関に鍵をいっぱいつけていてね……」
祥子さんは、そう切り出した。そうだ、確かにそんな回があった。帰宅後、久しぶりに単行本を取り出して確認すると、それは第二巻に収録された「忘れ物」という一編だった。
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球場に向かう広岡。ガスの元栓を締め、ストーブの火を消し、窓が閉まっていることを確認し、「忘れものはなし、うむ」と独り言をつぶやいて、玄関に鍵をかけて家を出る。その扉にはたくさんの鍵がついている。神経質で、何事にも慎重な広岡だったが、最後のコマでは靴を履くのを忘れて裸足で家に走る彼の姿が描かれている。
およそ45年も前の掌編をいまだに記憶していることに驚いた。それだけインパクトが強かったということだろう。
実はそれ以前に、本人に『がんばれ!!タブチくん!!』について尋ねたことがある。私の質問に対して、広岡は「そんなマンガは知らない」と言った。構わずに私は続ける。
――銀縁の眼鏡をかけて、家では着物を着ていて、グラウンドではヤスダ君、オオヤ君に厳しく接する人物です。
「私はあんな顔をしていないし、あんなしゃべり方をしない」
