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「自己記録更新を狙いたい」パリ五輪以来のマラソンに挑む大迫傑が34歳でデータを重視し始めたワケ「実際、数値をモニタリングしていくと…」
text by

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byShota Matsumoto
posted2025/12/06 17:00
12月7日のバレンシアマラソンに出場する大迫傑が、パリ五輪以来1年4カ月ぶりに走るマラソンについて語った
大迫 今年の6月くらいからですね。でも実は、アメリカでトラックを中心に走っていた2014年位の時期、そして初マラソンだった2017年のボストンでも9日のサイクルで練習をしていたことがあります。
もちろんワークアウト(ポイント練習)の頻度は高くなるし、練習メニューとしてはキツくなるんですけど、リカバリーを意識することで体の状態がまとまっていく実感があるんです。それに次のサイクルに入った時に数値でも自分の状態が上がっていることが確認できるので、「レース」というゴールへのプロセスがより明確になりましたね。昨日(取材前日)も朝のワークアウトで18km、午後に8km走っていますし、1サイクル内の走行距離はすごく増えているんですけど、データ的に成長している裏付けも取れている。自分でコントロールできる体の領域が広がっている感覚ですね。
34歳になってデータを重視
――データとの対話でより体に向き合えている感じですね。市民ランナーでも数値をとっている人が増えているので、大迫選手が34歳になってデータを重視し始めたのはとても面白い。しかし、結構大きい変化ですよね?
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大迫 自分では大きな抵抗はなかったんですけど、外から見ると大きな変化かもしれないですね。数値としては、VO2Maxだけでなく乳酸値もちゃんと見ながらやるようになりました。パリ五輪へのプロセスだった2023~2024年は、あまり数値を測らずに心拍とペースだけでやっていたんです。でも、今年に入って少し変えてみようと思い、初めてきっちり他の数値を測って練習をするようになりました。実際、数値をモニタリングしていくと体の状態が上がっていく様子も分かるし、自分に集中しやすいという面もあります。
――以前、20km競歩で世界記録を持っている山西利和選手にインタビューをした時に「地力をあげるとはどういうことか」を詳しく解説してもらいました。すると定期的にLT値(乳酸性閾値)を測って、その心拍数の数値を上げていくことを指標にしていると言っていました。VO2Maxを「エンジンの最大排気量」とすると、LTは「燃費よく長時間巡航できる最高速度」。LTを意識した練習もしていますか?

