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「自己記録更新を狙いたい」パリ五輪以来のマラソンに挑む大迫傑が34歳でデータを重視し始めたワケ「実際、数値をモニタリングしていくと…」

posted2025/12/06 17:00

 
「自己記録更新を狙いたい」パリ五輪以来のマラソンに挑む大迫傑が34歳でデータを重視し始めたワケ「実際、数値をモニタリングしていくと…」<Number Web> photograph by Shota Matsumoto

12月7日のバレンシアマラソンに出場する大迫傑が、パリ五輪以来1年4カ月ぶりに走るマラソンについて語った

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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Shota Matsumoto

 12月7日、大迫傑がバレンシアマラソンに挑む。昨夏のパリ五輪以来、実に1年4カ月ぶりのマラソンになるが、どんな走りを見せるのか。これまでと変えた練習方法、東京世界陸上で顕になった長距離における世界との差、そしてアスリートのSNS発信や自己表現。11月、ケニアで合宿中の大迫にじっくりと話を聞いた。<NumberWebインタビュー全3回の1回目/2回目へ>

バレンシアマラソンに向けた取り組み

――久しぶりのフルマラソンです。バレンシアを選択した理由を教えてください。

大迫 今回はしっかり自己記録(2時間05分29秒)の更新を狙いたいと思っています。バレンシアはそれを狙える高速コースだし、レース展開としてもいいペースになるんじゃないかと。

――10月に東京でレガシーハーフを走り、1時間1分45秒。ゴール後に「順調」とおっしゃっていましたが、その結果を含めてレースに向けたアプローチはうまくいっていますか?

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大迫 僕のフルマラソンに向けたスケジュールでは、いつもレースの6週間ぐらい前にハーフを1本入れていて、レガシーハーフも「いい刺激が入ればいいな」と走ったレースです。ですからレースに合わせた調整もせず、練習の流れの中でハードに追い込んだという感じで、そこは狙い通りだったかな、と。東京で走ったのは、最後の追い込みでケニアに行く前にちょうど良かったから。アメリカの高地から日本に帰ってきて、平地で質の高いスピード系の練習をしていたんですが、その最終フェーズとして「ハーフマラソンでも追い込んでいこう」と。その後、ケニアでは高地で練習ボリュームを増やしているのですが、レースまでの流れが綺麗にはまってきていると思います。

――ちなみに「体に刺激を入れる」時に目安として意識するのはゴールタイム、ラップタイムですか?

大迫 いや、VO2Max(最大酸素摂取量)ですね。レガシーハーフの3週間前に東海大記録会で5000mを2本走っているんですけど、あれも心拍をガッと追い込むVO2Maxを意識した練習でした。レガシーハーフも自分の状態を上げていくための、ステップのひとつですね。

――大迫選手の口から「VO2Max」という単語が出てくるのは意外でした。

大迫 そうですね。実はトレーニングに関して変えた点が2つあります。ひとつはトレーニングの「サイクル」、もうひとつがかなりデータに基づいてやるようになったことです。

 練習メニューの1サイクルを「7日」から「9日」に変えました。基本的には10日に1度、レスト(休養日)を入れています。それによって無理せず、段階を追って自分の状態を上げていけるようになりました。例えば、7日サイクルのままで現在の練習をしていたらおそらくオーバーワークになっていたんですけど、今は体の状態がとてもいい。完全な休養日は減っているんですけど、9日の中でも強弱をつけてますし、サイクルを変えることでリカバリーとのバランスがよくなり、練習の質と量ともに上がってはいるんです。

 それに僕はいまプロとして走ることにフルコミットできるので、箱根駅伝を狙う学生のように授業があったり、会社で仕事をしなければいけないという制約がありません。それであれば曜日に関係なく、自分の時間を最大限使うようにしたいという狙いもあります。

――いつから変えたのでしょうか?

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