投手挑戦わずか数カ月で150キロ…複数球団スカウトが「投打ともにレベルが高い」指名濃厚だった18歳“有望ドラフト候補”が「まさかのプロ断念」のナゼ 

　中学時代は、近年全国の名門校に好選手を送り込んでいる明石ボーイズに所属し、主に外野手としてプレーした。当時のエースは中学生ながら140キロ台の速球を武器としていた福田拓翔（東海大相模）。福田は何十校もの強豪から声を掛けられていたものの「自分は全然です。地元で勉強しながら野球を続けようと思って（滝川を）選びました」と地元・神戸の名門校へ進んだ。

　本人は中学時代の自分は「無名でした」と謙そんするが、近藤監督は「元々運動能力が高いので、こちらが少しアドバイスをしただけですぐに自分のものにできる」と、センスの高さだけでなく飲み込みの速さを評価していた。性格は朗らかで「誰にでも好かれるタイプ。練習はコツコツとやれるし、とにかく真面目」と指揮官。取材でも丁寧な言葉選びで受け答えする姿が印象深い。学業も優秀で5段階評定は常に4.5以上をキープし、3年間学級委員長も務めるなど、グラウンドを離れても人望は厚かった。

高2でブレイク…「プロに行きたい思いが強かった」

　2年春から新井は関西圏のメディアからも徐々に注目を浴びるようになった。

ADVERTISEMENT

　迎えた夏。県大会2回戦の神戸国際大附との一戦の先発マウンドに立った新井は、初回から140キロ台中盤の速球を立て続けに投げ込んでいた。打つ方では3打数3安打3打点と相変わらずのセンスの高さを見せつけたが、投げる方では7回を投げ8安打5失点。四死球は5個を数えた。

「あの時は真っすぐで空振りが取れなくて、カウントを悪くして打たれてしまって……。点差があったのにじわじわと追い上げられた試合でした」

今夏までは高卒プロを視野に入れていた新井だが…　©Fumi Sawai

　視察したスカウトはしなやかな腕の振りを評価し「投打ともにレベルが高い」と上々のコメントを残していた。この日の最速は147キロ。試合は4－6で敗れたが、秋、さらには翌年に向けて楽しみが膨らむマウンドでもあった。

「2年生になってたくさんの人に注目していただいて、自分もプロに行きたいという思いが強かったです。ピッチャーをはじめて、ここまで注目していただけるようになるとは思わなかったので、もっとレベルを上げて翌年はドラフト会議で指名されたいと思っていました」

【次ページ】　ポテンシャルは十分でも…「課題は制球力」