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甲子園の風BACK NUMBER
投手挑戦わずか数カ月で150キロ…複数球団スカウトが「投打ともにレベルが高い」指名濃厚だった18歳“有望ドラフト候補”が「まさかのプロ断念」のナゼ
posted2025/11/24 11:02
投手挑戦から数カ月で150キロをマークした兵庫・滝川高校の新井瑛太(18歳)。スカウトの評価も高く、本人もプロ志望だったが…?
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沢井史Fumi Sawai
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Fumi Sawai
昨年3月。春のセンバツ大会中に、あるNPBスカウトが声を弾ませながらこう教えてくれたことを思い出す。
「今日、新井君のブルペンをガンで計っていたら、150キロ出ていてビックリしました。これからが楽しみなピッチャーですね」
新井君とは兵庫の滝川高校の新井瑛太のことだ。春は12回、夏は7回の甲子園出場がある古豪・滝川高校で1年夏から中軸を打ち、左の強打者として早くから注目を浴びていた。中学時代(明石ボーイズ)は外野手だったが、本人曰く「投手をするのはまったく初めてでした」という。
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元々肩が強く、高い身体能力を見た近藤洋輔監督が投手を勧めたのが最初だった。新井自身も「一番目立つポジションなのでやってみたい」と冬場から意欲的に投手の練習を重ねたところ、わずか数カ月で“大台”に到達した。
近藤監督は言う。
「高校に入学してすぐくらいの頃にブルペンで投げさせてみたら球速が138キロだったので、いずれは140キロを越えて県を代表するピッチャーになれると思いました」
数カ月で150キロ超え…スカウトが連日、視察に
ただ、その成長度合いが驚くほど早く、噂を聞きつけたNPBスカウトが連日練習の視察に訪れるようになった。近年、2年生で150キロを投げる高校生は珍しくないが、投手未経験で、しかも数カ月でこの数字は、周囲がざわつくのも当然だろう。
幼い頃から運動神経の高さは同世代の中でも群を抜いていたという。小学校の運動会のリレーでは毎年アンカーを任されるほど足の速さは一目置かれる存在で、幼い頃からバレーボールやドッジボールなど球技は何でも得意だった。
父は野球、母はバレーボール、兄、姉はバスケットボール経験があり、スポーツに興じるのが当たり前のような家庭で育った。小学校入学と同時に野球を始め、小学生時は主にショートで遠くへ飛ばすよりも「アベレージヒッターでした。選球眼は良い方だったと思います」と本人は振り返る。

