投手挑戦わずか数カ月で150キロ…複数球団スカウトが「投打ともにレベルが高い」指名濃厚だった18歳“有望ドラフト候補”が「まさかのプロ断念」のナゼ 

　今年2月に取材した際も新井は高卒プロへの思いを口にしていた。近藤監督も「（高校から）行けるチャンスがあるならぜひ行かせてあげたい」と高校からのプロ入りを後押しする話もしていたが、本人は取材の最後に「今年の公式戦での成績次第で（プロに行くか）考えたい」と慎重な姿勢も見せていた。

　高卒プロ入りは大きな夢ではあったが、やはり気にかけていたのはコントロールだった。

「夏の神戸国際大附戦もそうですし、秋の試合（県大会1回戦・神戸第一戦）もフォアボールが多かった。まずは制球力を良くしないとプロへは行けないと思いました」

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　神戸第一戦は先発するも2度の押し出しを含む8四死球を許し、7回を投げ5安打5失点。8回から右翼を守り、打つ方では4番打者として4打数3安打とバットではやはり非凡さを見せつけるも、投げる方では精彩を欠いた。

ポテンシャルは十分でも…「課題は制球力」

　近藤監督は当時の新井をこう振り返る。

「スピードは出てもやはり課題は制球力でした。それでも練習試合では良いピッチングをしていたんですよ。でも、公式戦になるとどうしても不安定になる。ずっと懸念を抱いていた下半身の弱さがあらためて分かったので、冬場は全てを鍛えていかないと。本人にもこの冬が勝負だと言いました」

　年末はボールを一切握らず、学校から数キロ離れた須磨海岸での砂浜ランニングをはじめ、長距離、短距離のダッシュなど多彩なランメニューをこなした。さらには食事の量よりも回数を増やし、空腹の時間を少なくしながらエネルギーを摂取。もともと太りにくい体質だったが、秋から春にかけ体重が5キロ増え、身長は180センチまで伸び、縦横のサイズアップにも成功した。

　2月からブルペン投球を開始すると、その効果は明らかだった。

「ボールの威力もそうですが、縦の回転数が増えた感触がありました。去年までにはない手応えも感じました」

　3月の練習試合解禁からは登板と打者として外野を守る試合を交互にこなし、「状態は良かった」と本人。だが、やはり気にするのは公式戦での内容だった。公式戦で結果を残せれば、プロ入りへ向けてもそれは自信につながる。

　だが、この頃から新井の気持ちは少しずつ揺れはじめていた。

＜次回へつづく＞

#2に続く

「打者なら支配下指名も濃厚」だった18歳…なぜドラフト前に進路変更？ 経験わずか2年でも“最速153キロ”投手にこだわりのワケ「プロに行くからには…」