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「ごめん、指輪がないんだ」ポーランド人の妻についた“小さな嘘”…フェンシング松山恭助28歳が準備した最高のプロポーズ「彼女の家族に代わって守っていく」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byHirofumi Kamaya
posted2025/11/22 11:01
今夏に結婚を発表した松山恭助(28歳)
二人で指輪を受け取りに行くと伝えた日の前夜、クルージングを予約した。指輪は間に合わなくなったと嘘をついたが、でも本当は予定通り仕上がっている。何も知らないアレクサンドラさんは当然落ち込んだが、芝浦ふ頭からお台場方面をゆっくり回る船内のプライベート空間で、豪華なディナーを楽しんだ。アレクサンドラさんは美しい夜景や雰囲気に笑顔を絶やさず、冗談交じりに言った。
「こんな素敵な場所でプロポーズされたら、絶対にイエスと言うしかないよね」
松山は内心で「よしよし」とガッツポーズ。食事を終え、デッキにアレクサンドラさんを誘う。満を持して指輪を取り出し、そして跪いて英語でプロポーズした。
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「Will you marry me?」
「イエス」と言うしかないシチュエーション。プロポーズの翌々日に婚姻届を出し、8月27日に二人は晴れて夫婦となった。
驚いたポーランドの風習
国際結婚となれば、夫婦の間に生じる些細な違いはいくつもある。いきなり、婚姻届を提出した際にそれを実感した、と松山はにこやかに話す。
「日本では好きな時に市役所や区役所に行って、ささっと出して『おめでとうございます』でおしまいじゃないですか。でもポーランドでは婚姻届を出しに行く時は役所がものすごいお出迎えをしてくれて、その場に家族や友人もいる。お祝いだから、そのままみんなで食事に行く、という流れが普通だと聞いたんです。なかなかそこまではできなかったですけど、提出する前の日に二人で写真を撮りに行って、日本で言う『大安』のようにポーランドでも縁起のいい日や時間があると聞いたので、それに合わせました。少しでも彼女が喜んでくれればと思って」
二人暮らしが始まれば、日常生活での違いも数え切れないほどある。「むしろありすぎて思い出せない」と笑うが、たとえ違っても理由を説明すればアレクサンドラさんは理解してくれる。違いを受け入れ、尊重する姿勢に何より惹かれている、と松山は笑みをこぼした。

