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「ごめん、指輪がないんだ」ポーランド人の妻についた“小さな嘘”…フェンシング松山恭助28歳が準備した最高のプロポーズ「彼女の家族に代わって守っていく」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byHirofumi Kamaya
posted2025/11/22 11:01
今夏に結婚を発表した松山恭助(28歳)
松山の背中を押した存在もいる。東京・浅草にいる両親だ。幼い頃から自身にフェンシングを始めるきっかけを与えてくれただけでなく、2歳上の兄と試合に出場する際はどんな場所へも足を運んで応援してくれた。親から見れば、現役選手のうちに結婚を決めること、さらに国際結婚となればなかなかのハードルと考えるのが普通だろう。
しかし、松山家は違った。反対するどころか、むしろ「早く結婚したほうがいい」と後押ししてくれた。
「生まれも育ちも下町ですけど、フェンシング選手として生きる僕にとって海外に行くことや海外の人たちと接することは人生の一つのパーツ。それを両親も理解してくれていたので、国際結婚に対しても全く抵抗がなかった。むしろ、彼女の人柄をとても気に入ってくれた。彼女にもフェンシング選手としてのキャリアがある中、それを捨てて、日本という全く違うアジアの国に飛び込んでくれる覚悟を持ってくれているんだから、それに対して僕が自分のタイミングを、と考えるのは失礼だと。彼女の姿勢に対して誠意を見せたい、見せないといけないと心を決めました」
松山がついた小さな嘘
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世界選手権を終え、オフシーズンに入った2025年8月。二人で婚約指輪を買いに行った。彼女を驚かせるために内緒で用意して、サプライズを仕掛けたい気持ちもあったが、五輪翌年のシーズンで心身の疲労も大きく、そこまでの余裕がなかった。ただ、だからこそプロポーズにはこだわった。
驚かせたいし、少しでも喜んでほしい。松山はアレクサンドラさんに小さな嘘をついた。
「指輪の受け取り、少し遅くなっちゃった。ごめん、だから明日は指輪がないんだ」

