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核心にシュートを!BACK NUMBER
上田綺世が心を痛めたガーナ戦“不慮の接触”ではなく…田中碧の論点は「派手さを学びたい」「常に絶妙な距離感」佐野海舟との好相性だった
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/11/18 11:04
佐野海舟と田中碧。ガーナ戦で中盤センターを務めた2人は、好相性だったと言えそうだ
佐野とは「特段(それぞれの役割分担などを)話しているわけではないんですけどね」と前置きしてから、田中はこう解説した。
「彼の良さを出すために、近くしたり、離れたり……お互いの距離感とか立ち位置は、攻守において、すごく良いものはあるかなと思います。彼とはお互いを見ながらプレーできている部分もあります。全く、違うことができるタイプだからこそ、お互いに良さが引き出されるのかなと思うので」
田中が選手として備えている強みを一目で理解するのは簡単ではないし、言語化するのはもっと難しい。ただ、今回の佐野の意見につながるような決定的な発言を田中は残している。およそ3年前、自身の理想像についてこう話していたのだ。
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「他の選手から『コイツと一緒にやっていて、プレーしやすいな』とか『(ピッチの上に)いて欲しいな』という選手になるのが理想なのかなと。ピッチの中(にいる選手に)しかわからないだろうし、見ていてもわかりづらいかもしれないですけど……。それが、自分の価値です」
海舟の派手さをもっと欲しいな、と
佐野が輝くのは、田中がそんな理想を掲げながらプレーしているからだろう。
そのように、田中がバランスを取るために細かく動いたり、ピンチの芽をつんだりするアクションは、目に見えない。一方で、佐野が大胆にボールを奪ったり、勢いよくボールを運んだりするのは誰の目にもわかりやすい。あまりに対照的だ。
もちろん、どちらもサッカーの試合には欠かせないものだ。ただ、貪欲で、考える力を武器にしている田中は、こう付け加えるのは忘れなかった。
「海舟はボールの取り方とかも派手ですし、個人的にはそういうところは学ばないといけないなと思いますし。そういう派手さをもっと欲しいなと言うのは、プレミアでプレーしていても感じるので」
「プレミアリーグでプレーしても感じる」というのは、実に示唆に富んでいる。そもそも、日本でよく使われる『サポーター』というのはイングランドから輸入された言葉である。『サポーター』という表現になったのは、彼らの作り出す空気が試合内容や結果に大きな影響を及ぼすとサッカーの母国の人たちが確信しているからだろう。そして、そんなサポーターを巻き込んで試合に流れを呼び込むためには、佐野のような派手で、“わかりやすいプレーも”必要になる。そう考えるから、田中は「学ぶ」という表現を使ったのだった。
当事者として語った“不慮の事故”と願い
そんな田中は、ガーナ戦で不慮の事故の当事者となってしまった。

