「スケート人生に悔いはないという気持ちで」引退表明の坂本花織（25歳）3度目の五輪に向け世界最高得点を出せたワケ「次世代に譲るのはあと数カ月待って」 

「うーん。コンポジションが9点ギリギリやん……。まだ頑張ります」

　ジャンプの出来不出来よりも、演技構成点を何より先に気にする。そこに坂本の戦略がにじみ出るようなひとことだった。

「スケート人生に悔いはない」気持ちで滑った

　翌日のフリー。「引退するシーズンに滑りたいと思っていた」という「愛の讃歌」を演じる。すべてのジャンプを着氷すると、フランス杯で取りこぼしたスピン2つもレベル4を獲得した。

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「このフリーは（3曲メドレーの）2曲目の『愛の讃歌』は自分でやりたいと言ったパートなので一番気持ちが乗る部分。3曲目のパートは『何も後悔はしていない』という訳になる部分があるので、自分のスケート人生に悔いはないと言い切る気持ちで滑りました」

　スピード感、安定感、世界観。すべてに、これまでの経験が詰め込まれている。ブラッシュアップした演技構成点は、フランス杯の73.34から73.39へと伸ばした。

　すると、演技面でのわずかな点数アップに対して中野コーチは厳しく評価する。

「もっと後半のスピード感が出ないと感動できません。もっと走り込んで滑り込んで、体力をつけさせたいと思います」

　それを聞いた坂本は、苦笑い。

「そうだろうと思います。自分に甘いので、フランス杯よりは出たなと思ってしまっていたので、カツを入れていただけるのはありがたいことです」

　一方の中野コーチは、いつもの淡々とした口調で付け加える。

「坂本にとって最後の一年。いつもより怒らないようにしています。ある程度大人なので、怒らなくてもやってほしいです」

「次世代に譲るのは、あと数カ月待って」

　その言葉に、驚いたように目を見開く。

「どうりで……。最近、昔より怒られなくなったから、呆れられたのかと思ってヒヤヒヤしていました。とにかく頑張らないと！」

　総合得点は227.18点で、中井がマークした今季最高点を0.1点の僅差で塗り替えた。

「そりゃあ負けたくないですよね。まだちょっと次世代に譲るのは、もうあと数カ月待って、みたいな感じです」

　経験を武器に、3度目の五輪シーズンを駆け抜けていく。