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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「佐々木麟太郎ではない…」NHK解説者が一番驚いたドラフト1位指名「外れ外れ1位で彼にいくとは…」「日本ハムのスカウトはよく見ているよ」「本人からLINEがきた」
text by

遠藤修哉Naoya Endo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/12 11:25
西武からドラフト1位指名を受けた明治大の小島大河(右)と日本ハムから1位指名された同大・大川慈英
「明治大学の投手陣とは、ほとんどLINEで繋がっているよ。試合で打たれた後は、質問が来る。スライダーの曲がりを改善したいだとか、投げ方のどこがまずいのかとか。そのたびに試合の映像を見返して、ちゃんと返信してますよ」
明治大が導入している映像分析ツールは、武田氏のスマートフォンからもアクセスできる。全試合の映像を、テレビ中継視点だけでなく、学生スコアラーらが撮ったバックネット裏からの視点でも確認し、フォームのわずかなズレやタイミングの課題を指摘する。
「本当に便利な時代になったよね。俺がグラウンドに行けない時でも、彼らの状態をしっかりチェックできる。とくに教え甲斐があったのは、菱川一輝(花巻東出身・4年生)。グラブをはめている左手の使い方を修正するように指導したら、春のリーグ戦と比べてコントロールが劇的に良くなり、最速で152キロが出るようになった。今年の秋のリーグ戦では7試合10イニングを投げて、防御率0.00。彼はプロ志望届を出さなかったけれど、社会人で2年やれば、いずれドラフト1位か2位で指名されるレベルの投手だよ」
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技術的なアドバイスと共に、武田氏が教え子たちに繰り返し伝えているのが「プロの厳しさ」だ。
「ドラフトで指名されて、浮かれている暇はない。プロに入ったら、カルチャーショックを受けるはず。『周りは化け物ばっかりだ……』ってね。俺自身がそうだったから。完全に出遅れてしまって、開幕は二軍スタートでした。だから、彼らには『プロはすごいぞ、とんでもないぞ。今のままじゃ通用しないぞ』と、口を酸っぱくして言っている。彼らにとって最後の公式戦、11月の明治神宮野球大会が終わったら、来年2月から始まるプロのキャンプについていけるように練習させるつもりだよ」
「日本ハムのスカウトはよく見ているよね」
では、なぜ日本ハムは大川投手を1位で指名したのか。武田氏が指摘する「体力面の課題」は、当然プロのスカウトも見抜いているはずだ。それでも1位で指名した背景には、日本ハムの明確なチーム戦略と、彼の将来性への高い評価があったと武田氏は分析する。
「スカウトはよく見ているよね。彼のポテンシャルは誰もが認めるところ。その上で、今の日本ハムには絶対的なクローザーがいないというチーム事情がある。大川は先発もできるけど、短いイニングなら今すぐにでもプロで通用する力がある。リリーフとして育てていくというプランが、球団の中にはっきりとあるのではないかな」
即戦力として1年間フル回転することを求めるのではなく、まずは彼の能力が最も生きる場所で経験を積ませ、じっくりと育てていこうという育成方針。それこそが、日本ハムが彼を1位で指名した理由だと武田氏は見る。
「日本ハムは育成が上手な球団だし、彼の力をうまく引き出してくれることを期待している。クローザーをやるにしても、まずは体力。とにかく食って、トレーニングして、プロの体を作ってほしいよね」
「後輩の指導は、正直めんどくさい」と苦笑いしながらも、その表情はどこか嬉しそう。プロという厳しい世界へ旅立つ若者たちの背中を、温かく、そして厳しく見守っている。

