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「俺がホームラン打って決めてやったぜぇ」ソフトバンクの伏兵・野村勇の日本シリーズ優勝弾「最高だよ!イサミ‼︎」逆境を救ったメンタルコーチの言葉
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/11/12 17:20
日本シリーズ第5戦、延長11回に日本一を決める値千金の決勝弾を放ったソフトバンクの野村勇
この日の試合前、野村は焦っていた。
フリー打撃の感触が良くないのだ。こういうとき、野村はいつも打撃フォームのことを考え込んでしまう。構え方やスイングする時の手の使い方……そうやって自分との戦いがはじまり、向き合う投手のことはなおざりになってしまっていた。
だが、この日はすぐに切り替えた。
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「打撃フォームのことは一回、捨てよう。試合中にそこを考えても打てないから」
自ら心のなかで反芻した。それは日々、伴から言われてきたことでもある。
「150kmのボールを打ち返すためには、いかに考え事を減らすか、集中するものを絞るのが大事だよ」
「伴さんがいなければ、僕は活躍できてない」
これも野村が伴に言われつづけてきた言葉である。この日も試合中、伴と話しながら、意識を絞りこむ作業を行っていた。
自分の得意なコースに集中する――。
高めを狙え。11回も、それだけを心がけた。完璧にとらえた5球目は、直前の速球よりも浮いた球だった。
進境著しい28歳の青年は言う。
「伴さんと話すことで考えを整理して、試合に臨めるんです。伴さんがいなければ今年、僕は活躍できてないし、一生、フォームのことを考えていたと思います(笑)」
逆境を救ったメンタルパフォーマンスコーチ
今年は主力が続々と負傷離脱し、何度も窮地に陥った。春は最下位に沈み、夏は首位に浮上しても2位の日本ハムの猛追に遭った。秋にはCSで3連敗し、最終戦を落とせば敗退という大ピンチに見舞われた。
いくら戦力が豊富だとはいえ、いつ瓦解してもおかしくなかった。いったい、彼らはなぜ、逆境を何度も乗り越えられたのだろう。ただひとつ言えるのは、そこにはいつも伴の姿があったということである。
伴には本格的な野球経験がない。学生時代の部活動はサッカーとテニス。商社マンを経て、渡米してデンバー大大学院でスポーツ&パフォーマンス心理学を修了し、コンサルティング事業を立ち上げていた。
伴がソフトバンクに入団したのは昨年12月末だった。複数の選手が精神面をケアする専門家の必要性を球団に訴えたことがきっかけで、2025年に新設されたメンタルパフォーマンスコーチに就いた。
チームの転機は5月だった。
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