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「優勝は2005年が最後って、おかしいやろ」岡田彰布は“勝てない阪神”をどう変えたのか?「よくもまあ、こんな状態で…」2年目にあった“最大の後悔”
text by

内匠宏幸Hiroyuki Takumi
photograph byNanae Suzuki
posted2025/11/08 17:01
2023年、阪神を38年ぶりの日本一に導いた岡田彰布。名将はチームに何を残したのか
岡田流の改革で、選手の意識は確実に変わった
もちろん戦略的な構想を、着実に実践していった。大山悠輔、佐藤輝明のポジション固定。中野拓夢のセカンドコンバートなど、そこには岡田流の根拠があった。さらにチームの意識改革に乗り出した。「監督の責任の中には選手の給料を上げてやることも含まれる」。それがゲームの中で選ぶ四球の価値。それまでの査定ポイントをアップするように球団に掛け合った。
それによって選手の意識は確実に変わった。リーグ最多の四球を選び、得点に結びつくケースが増えた。四球を得る=ボール球を振らない。これを「当たり前のこと。普通にやればいいんよ」と岡田は言葉にした。この四球革命が18年ぶりのリーグ優勝、そして日本一につながったことを阪神ファンなら誰もが知っている。だから「岡田監督は名監督!」と口を揃える。熱狂的な阪神ファンの目は肥えている。
逆も真なり。攻撃では四球を得る重要性を説き、守りでは四球の怖さを訴えた。「岡田野球」の神髄は守りに尽きる。これは岡田の野球の哲学。守り負けないチームこそが勝者になる。特に投手力。ここを充実させることが優勝の条件となる。先発投手を選定し、次に取り掛かったのがブルペンの厚みだった。
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「いまの野球はブルペン勝負よ。昔とは大きく様変わりした。酷使しないように、分厚いブルペンにすることが絶対条件や」。第1次政権下で、岡田は酷使とも取れる起用法があった……と認めている。それは、いまは通用しない。無理使いは絶対に避ける。だから二軍との風通しをよくして、可能性のある若い投手を試し、起用した。
個人的に突出した選手はいなかった。全員が自分の「役割」を理解し、チーム力で他球団を圧倒した。2023年のリーグ優勝、日本一はまさに岡田が目指した野球だった。「なあ、こんなにすべてうまくいくもんなんやな。想像以上の結果やった。ホンマ、うまく行き過ぎ」と振り返り、そして「だから来年、そうは簡単にいかんやろ」と付け加えている。
流行語大賞に選ばれた「アレ」から派生した「アレンパ」。これが連覇への合言葉になった2024年シーズン。心の片隅にあった不安要素が出る。1年前、あれだけ機能した攻撃陣が低迷。「普通に」野球ができなくなった。

