「優勝は2005年が最後って、おかしいやろ」岡田彰布は“勝てない阪神”をどう変えたのか？「よくもまあ、こんな状態で…」2年目にあった“最大の後悔”

「優勝は2005年が最後って、おかしいやろ」

　評論家生活を送っていた岡田は、阪急阪神HDのトップ・オブ・トップとゴルフをすることになった。和やかにラウンドし、プレー後のクラブハウス。岡田とトップが2人残った。そして別れ際、声を掛けられた。「秋にはたのみますよ」。この言葉の意味は？　交わしたグータッチの意味は？　いろんなことが頭に巡った。

　すでにこの時、タイガースの監督である矢野燿大が「今季限りでの退任表明」をする異例の事態になっていた。この影響もあったのか、阪神は開幕から大きく出遅れ、夏になる頃からスポーツ紙は「次期監督」報道に舵を切った。

　球団は独自で候補を絞っていたが、それを吹き飛ばしたのが阪急サイドの鶴の一声だった。ようやくグータッチの意味が判明した瞬間だった。「岡田彰布、監督カムバック」。そのオフ、2008年以来15年ぶりの復帰が決定した。

2022年10月16日、監督就任会見で抱負を語る岡田彰布　©JIJI PRESS

ADVERTISEMENT

　岡田を推した理由は勝てる監督だから。その期待に65歳の岡田は熱く燃えた。いきなり球界最年長監督になったが、経験値と勝負勘に自信を抱いていた。だがトラ番記者は年齢的なギャップを危惧していた。「孫のような年齢の選手とどう向き合うのか？」。岡田は笑いながら答える。「現場を離れて、オレも若い人と接してきた。どんな考えを持っているのか、オレなりに理解できている」。

　しみじみ漏らしたこんな言葉がある。「オレが監督を辞めたのが2008年。それから一度も優勝していない。なんでや？　阪神の優勝は2005年が最後って、おかしいやろ」と、ユニホームを脱いでからも歯がゆくて仕方なかった。

　だから監督を引き受けた。必ず強いタイガースにする。そのための方策をどんどん編み出した。岡田は派手なパフォーマンスやエンタメ的な要素を嫌う。それまであったホームランを打ったあとのベンチでのメダル掛けを廃止。ヒーローインタビューでの「最高でーす」のフレーズもやめさせた。そんなことを考える時間があるなら、勝つためのことを考えろ！　昔風とささやかれても、岡田は曲げなかった。

【次ページ】　岡田流の改革で、選手の意識は確実に変わった