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「急に力が抜けてしまったわ」岡田彰布、阪神タイガースでの“最後の日々”…球団最多勝監督の「2年間の最大の悔い」とは?【内幕レポート】
2024/12/04
電撃退任の衝撃は、彼がこの球団にもたらしたものの大きさを証明した。15年ぶりの帰還にはじまる物語は、幸せな結末では決してなかっただろう。しかしながら、この稀代の野球人は、最後まで自らの信念を貫いた。(原題:[インサイド・レポート]岡田彰布「栄光と、苦悩と」)
11月25日、岡田彰布は誕生日を迎えた。67歳のバースデーは実に穏やかだった。重い鎧を外し、岡田に健康な体と、健康な心が戻ってきた。
「メシがとにかくうまくてな。よく食べるわ。おかげで体重が4kgも増えた」。どうしてここまで嬉しそうに語るのか。それは1カ月ほど前、岡田はとんでもなく苦しんでいたからだった。
前兆はあった。長いペナントレースが終わり、クライマックスシリーズ(CS)に挑む前、練習後に体温を測った。36.9度。平熱より少しだけ高かったが、妙に体がだるかった。その夜、早めに布団に入った。頭の中でCSの構想を考える。時間が過ぎる。目を閉じる。でも眠りにつくことができない。一睡もできぬまま、朝を迎えた。
翌日も同様だった。シャキッとしないまま、練習に出て、自宅に戻る。ダルさがひどくなっていた。眠れない。疲れているのに眠れない。「丸2日、寝てない」。目を赤くして、こう打ち明けた。好きな酒も欲しくはなかったし、食欲も消えた。
次の日、甲子園の室内練習場に向かう階段も手すりが必要だった。室内からグラウンドに移動するのに、球団関係者が車を用意するほどだった。息をするのもゼ~ゼ~と吐き、せき込むことがあった。ノックバットを杖代わりにするほど、状態は悪化していた。
「病院で診てもらわないと」と勧めると、意外なほど素直に返してきた。「これから行ってくるわ」。これまでなら「大丈夫や。心配いらん」と突っぱねていた人間が、初めて弱みを見せた。
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photograph by Nanae Suzuki