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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「神様、仏様、由伸様でしょ」ドジャース山本由伸にNHK解説者も驚嘆! ワールドシリーズMVPで「彼の投球術はメジャーの野球を変えている」
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小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byGetty Images
posted2025/11/03 17:50
優勝が決定した瞬間、ナインにもみくちゃで祝福される山本由伸(中央)。小早川氏は山本の投球がMLBの新たなトレンドを後押ししているのでは、と見た
同点アーチに山本の表情が……
その第7戦、山本投手は5回裏にブレイク・スネル投手と一緒にブルペンに向かって、8回にはキャッチボールを始めていました。そして、3-4で迎えた9回表、あと2人でゲームセットというところで、ミゲル・ロハス選手の同点ホームランが飛び出したんです。私はそこでの山本投手の表情に注目しました。
ブルペンでは佐々木朗希選手も見守っていて、一発が出た瞬間には大喜びでスタッフとハイタッチを交わしていました。ところが山本投手は、打球の行方を見ながら、タッチを交わすでもなく、両手で顔を押さえてふうー、と息をついていたんです。この様子は私には、ああこの後は自分が投げるな、と覚悟を決めたように見えましたね。非常に印象的な場面でした。
実際に9回裏にスネル投手が1死一、二塁のピンチを迎えたところで交代してからは、手に汗握る局面の連続でした。ここでは、死球を与えて満塁のピンチから、好守の連続もあってしのぎます。10回裏は三者凡退に抑えましたが、勝ち越した11回の裏は、相手の主砲ブラディミール・ゲレーロJr.選手にツーベースを打たれるなどして、1死一、三塁。逆転サヨナラ優勝決定のランナーを背負いながら、ショートゴロの併殺で抑え切りました。
両チームが先発投手を総動員した
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山本投手の勝負強さは本当に見事でしたが、考えてみると、この日は大谷翔平投手、タイラー・グラスノー投手、スネル投手、山本投手と、ポストシーズンの先発ローテーション投手が全員投げたんですよね。
ブルージェイズのほうも、サイ・ヤング賞3回のマックス・シャーザー投手の先発にはじまって、ブルペン陣だけでなく、第1戦と第5戦に先発したトレイ・イーサベッジ投手、第4戦に先発したサイ・ヤング賞のシェーン・ビーバー投手をつぎ込みました。今シリーズではリリーフに回ってこの日も投げたクリス・バシット投手も、2年前に最多勝、今季も11勝を挙げた純然たる先発投手です。
もちろん、ポストシーズンですからエースをリリーフにつぎ込むということはありますが、両チームの先発投手が1試合でこうも軒並み投げるというのは、私もなかなか見た記憶がない光景でした。振り返れば、山本投手がポストシーズンで2試合連続完投したのも、24年ぶりという珍しいできごとでしたね。

