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「中卒でこの世界に入って…」「ドMなのかな(笑)」16歳でデビューした女子プロレスラーの美徳…稲葉ともかが何度も繰り返した“ある悔しさ”
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/10/29 11:03
JTOの1期生として団体を引っ張る女子プロレスラーの稲葉ともか
「痛いんですけど…ドMなのかな(笑)」
母の夢だったプロレスは、いつしか自分の人生そのものになっていた。
「プロレスの“受け”という要素がいいなと思うんです。ドMなのかな(笑)。やられてやられて、それに耐える。痛いんですけど、そこからやり返すのが醍醐味だなって」
フルコンタクト空手式の蹴りを得意とするともかは、JTOという団体でその個性を伸ばす。団体は通常のプロレスルールの他に独自のJTOルールを制定。KO、ギブアップのみで決着するもので、打撃に加え関節技という武器も身につけた。
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JTOルールのQUEEN王座、さらにGIRLSタッグ王座も獲得。ベースに“格闘スタイル”があるから他団体に出ても若手戦線の中で目立つ存在になった。センダイガールズではジュニア王座を獲得。今年、引退間際の“女子プロレス界の横綱”里村明衣子と対戦した際にはその実力を高く評価されている。
レギュラー参戦中のスターダムでは、9月にスターライト・キッドが持つ“白いベルト”ワンダー王座に挑戦した。敗れはしたが互いに得意とする“脚攻め”に特化した展開は見応え充分。業界最大の女子団体、そのトップ戦線で活躍できる実力を示したと言っていい。
何度も繰り返した“ある悔しさ”
10月15日には、新宿FACEで初めての自主興行を開催した。ライバルのスターライト・キッドと組み、対戦相手は朱里(スターダム)と岩田美香(センダイガールズ)。朱里も岩田も空手経験者で蹴りが武器。朱里は稲葉がスターダムで所属するユニットGod's Eyeのリーダーだ。
自身のお手本にもなる格上2人。その猛攻を受けまくった末に稲葉は敗れた。自主興行だからひたすら自分を目立たせる“祭り”にしてもいいはずなのだが、彼女のマッチメイクは自分に試練を課すものだった。
大会のオープニングとエンディング、それにバックステージコメントでも、稲葉は何度となく「完売御礼とはいかなくて」と悔しさを口にした。悪い客入りではなかったのだが、やはり満員にしたかった。
「Sareee選手やキッちゃん(スターライト・キッド)の自主興行は同じ会場で即日完売なので。自分のブランド力のなさを感じてしまいましたね」



