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「本当に志望届を出していいのか」ドラフト裏話…《楽天4位指名》高校No.1捕手がスランプに悩んだワケは? 転機となった兄の助言「プロの方が夢がある」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2025/10/25 17:01
楽天から4位指名を受けた福島・学法石川高校の大栄利哉だが、実は直前までプロ志望届の提出を悩んでいたという
夏の大会は福島大会のベスト4で涙を吞んだが、13打数5安打、打率3割8分5厘と数字は悪くなかった。にもかかわらず大栄の自己評価が低い理由について、佐々木はこう見る。
「責任感が強いからでしょう」
そして佐々木は、大栄のこの性質を肯定するようにこう結ぶ。
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「彼は努力を惜しまない子なんです。なにより明るい。どんなときでも元気を出せるから、いろんな困難を打破してくれるだろう、と」
大栄の苦悶はなおも続いた。
U18ワールドカップで「7打数無安打」の屈辱
高校通算13ホームラン。広角へと長打を放てる。こだわるキャッチャー守備も、遠投115メートルと地肩が強く、二塁ベースへの送球タイムも最速で1.78と高校レベルを超越する。
だが、潜在能力を評価されU18ワールドカップの日本代表に選出されながら、大栄は7打数ノーヒットと沈黙した。当時の心情について、大栄はこう漏らす。
「プロについて気持ちが揺れ動いていたというのが、正直なところなんですけど」
スカウトから直に評価を聞ける監督の佐々木からすれば、教え子の心のぐらつきは痛いほどわかる。だから、こう斟酌するのだ。
「揺れ動いていたというのは、自信でしょうね。パフォーマンスが思うように上がらない。それに対してプロ側がどう思っているのかというのは、本人だってわかっているはずなんです。『プロを表明していいものか?』と悩むわけですけど、だからこそ『やるしかないだろう』と。悩んだら何も手につかなくなるから、そういったものを打破するためにも努力するしかないだろう、と言ってきました」

