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「ボールが急に飛ぶようになった」珍現象は本当か…恩恵を受けたDeNA筒香嘉智の証言「感触と飛距離が合うように」では阪神は? CSのカギを握る不確定要素
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鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN / Hideki Sugiyama
posted2025/10/15 11:05
プロ野球後半戦でともに14本塁打を放ったDeNAの筒香嘉智(左)と阪神の佐藤輝明
「今は慣れてきましたが、オールスター明けにボールを握った瞬間に『アレっ、何かボールが小さくなったかな?』って感じがしたんですね。それで打った感じも、明らかに飛ぶようになっていた。おそらく強く乾燥をかけたボールになったのではないかな、と。そんな感じがしますね」
計器で測っても、おそらく0.数ミリ、ヘタをしたら0.0数ミリのミクロの世界かもしれない。それでもそれを手の平で感じ取るのもプロの感覚である。そのプロの感覚がボールの変化を感じとり、そして実際にボールは飛んでいるのである。
球宴前と球宴後の1試合あたりの本塁打数を比べてみると、セ・リーグが0.52本から0.81本、パ・リーグが0.59本から0.74本へと確実に増加している。
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そして実はこの“飛ぶボール”の一番の恩恵を受けているのがDeNAなのだ。
オールスター明けのDeNAの1試合平均本塁打数は1.18本と、球宴前の0.51本から倍増。平均得点も3.01点から4.45点と1点以上アップしている。
DeNA筒香の証言「感触と飛距離が合うように」
特に目を引くのはCSファーストステージでも2本塁打と爆発した筒香の打棒だ。
本人を直撃した。
「ホームランが出ているのはボールのせいかどうかは分からないですが、8月に一軍に復帰してから自分が打った感触と飛距離が合うようになってきている」
筒香のボールの変化に対する見解だ。
「以前はしっかりヒットした感触の打球が、自分の感覚通りに伸びずに外野フライになってしまうケースも多かった。そこが自分の中で違和感を感じている部分でした。でもいまはそれがきちんと本塁打になっている。自分の感覚と打球が一致するようになった。だから自信を持ってスイングできるようになったのは大きいと思います」
8月以降に14本塁打でOPS1.268。この数字はボールのせいばかりではないだろうが、ボールの変化を感じたことで筒香が完全覚醒したのは明らかだ。
DeNAほど恩恵を受けていない阪神
一方でこのボールの変化は阪神にどのような影響を与えているか、である。
阪神打線ももちろん恩恵には預かっている。
本塁打王と打点王の二冠に輝いた佐藤輝明内野手は、8月以降に筒香と同じ14本塁打を放って量産体制を維持してきた。
ただ、チームとしては少し違う結果が出ているのだ。


