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佐々木朗希は来季ドジャース守護神…って早計なの? 背景に「米球界でリリーフが低年俸・冷遇問題」グラスノー49億円、山本由伸21億円だが 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/10/13 11:00

佐々木朗希は来季ドジャース守護神…って早計なの? 背景に「米球界でリリーフが低年俸・冷遇問題」グラスノー49億円、山本由伸21億円だが<Number Web> photograph by Norm Hall/Getty Images

リリーフで好投を続ける佐々木朗希。クローザーとしての未来を見てみたい気もするが、メジャー特有の年俸事情も勘案する必要がある

 救援投手でも、野球殿堂に1年目に満票で選出されたマリアノ・リベラのようにMLB史上に残る偉大な選手はいる。しかし、今のMLBでは救援投手のステイタスは明らかに先発投手より低く、冷遇されているのだ。

 救援投手のステイタスや年俸が低い決定的な要因は、投打を含めた選手の総合指標であるWARだろう。

 野球データ専門サイトBaseball Referenceによれば、今季、先発投手で最もWARが高いのは、フィリーズのクリストファー・サンチェス(13勝5敗 率2.50)の8.0、続いてパイレーツのポール・スキーンズ(10勝10敗 率1.97)の7.6だった。

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 これに対して、救援投手では、前出のレッドソックス、アロルディス・チャップマン(5勝3敗32S 率1.17)の3.5が最高。続いてツインズ、フィリーズで投げたヨアン・デュラン(7勝6敗32S 率2.06)の3.2だった。

 クローザーやセットアッパーは、試合の帰趨を左右する重要な役割ではあるが、WARは基本的に長く出場した選手の数字が良くなる「積み上げ型」なので、どうしても評価は低くなるのだ。

日本人も…松井と山本、今永の年俸を比べると

 また、MLBでは先発投手に対して、救援投手は絶対数が多い。

 MLB全体で100イニング以上投げた投手は30球団で127人だったが、20試合以上救援登板した投手は286人もいた。ローテーションを回す先発要員は常に不足している一方で、救援投手は常に余剰だと言ってよい。

 NPBでは現在の最高年俸が、ソフトバンクのオスナ、巨人のライデル・マルティネスと救援投手の12億円余であるなど、ステイタスはMLBほど低くはない。しかし、今やNPBでも先発投手と救援投手は「別のポジション」なのは間違いない。佐々木朗希自身も、高校時代からエース、先発投手として投げてきた。NPBでは1度もリリーフ登板したことがなかった。彼自身も「先発で投げたい」との意欲は強いはずだ。

 MLBに挑戦する日本人投手を見ても、救援投手の年俸は低い。

 昨季、楽天からパドレスに移籍した松井裕樹の今季年俸は、550万ドル(約8.25億円)、松井は24年から28年まで5年総額2800万ドル(約42億円)の契約を結んでいる。確かにNPBでは手にすることができない高額年俸ではあるが、山本由伸は今季だけで1416万ドル(約21.2億円)、カブスの今永昇太も1325万ドル(約19.8億円)だ。

 また、年中ブルペンに待機する救援投手と、明確な「上がりの日」がある先発投手では生活リズムにも大きな差がある。

朗希はドジャースの一員となったからこそ

 ポストシーズンの大活躍で佐々木は初めて「ドジャースの一員」になったと実感したはず。しかし先発投手として来季、マウンドに上がるためには――以前の記事でも記したが、「球種を増やす」ことと、シーズン通して投げることができる体力を身につける必要があるだろう。

 佐々木朗希をめぐる物語は、ようやく「第1章」を終えたばかりだ。〈朗希とドジャース特集:つづく〉

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