「100m走って…もはやスポーツじゃない」人気漫画家が“たった10秒間の距離”に惹かれたワケは？ 4年間の努力が一瞬で…「え、これでもう失格なの？」 

「竹田選手が当時の自己ベストを出した試合の日の話を聞いたことがあって。その日は朝起きた瞬間から、何かいつもと違う感覚があったと言っていたんです。

　目覚ましが鳴ると同時に目が覚める。試合に向かうまでの道中の信号が全部青で、一度も足止めを食らわない。駅に着いて電車に乗ろうとすると、そのタイミングでちょうど電車が入ってくる……そんな風に、競技場に向かうまでの全部がうまくいったと。そこにすごい記録が出るという感覚があったと言っていて。それで、実際に試合で自己ベストが出たという話をしていて。なんというか、それがすごく映像的だったんですよね」

　もともと原作にはないエピソードだったが、その話を聞いて映画の中ではそれを活かしたシーンも取り入れたという。

現在でも日本のトップスプリンターとして活躍するスズキの竹田一平選手　©JIJI PRESS

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「短距離走って基本は個人競技で、しかも100m走は10秒間で終わってしまう。その試合の見せ方はそもそもすごく難しい。同時に原作の特徴でもある、キャラクターたちのそれぞれの心情や哲学がある会話劇をどう見せるか。この難しさをどうエンターテイメントとして見せるかはすごく考えました」

　前述の魚豊さんが語っていたような、原作で色濃く反映されている100m走の「哲学性」をどうエンタメ化するのか。その課題を解消するためのひとつの要素がこのシーンだった。

アニメ映画化で伝えたい「100m走の魅力」

　さて、同作品は封切り3日で興行収入1億円を突破するなど、好調なスタートを切っている。

　世界陸上の開催もあり、“陸上熱”が高まっているいまだからこそ、映画館に足を運んでほしいと岩井澤監督は言う。

「世界陸上では会場となった国立競技場でも大きな盛り上がりがありました。リアルな陸上競技の勢いに加えて、例えば小学生や中学生といった子どもたちが、この映画を入り口として陸上競技を始めるきっかけになればとても嬉しいです」

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