「100m走って…もはやスポーツじゃない」人気漫画家が“たった10秒間の距離”に惹かれたワケは？ 4年間の努力が一瞬で…「え、これでもう失格なの？」

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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web

photograph by魚豊・講談社／『ひゃくえむ。』製作委員会

posted2025/10/03 11:05

映画化された『ひゃくえむ。』の主人公・トガシ（右）とライバルの小宮。作者の魚豊さん、監督の岩井澤さんは100mという種目の魅力をどう感じるのか

　その想いを漫画作品に落とし込むに当たって、取材として実際に多くの選手の話を聞く中で、その感覚はより強くなっていったという。

「実際に選手のトレーニングを目の当たりにすると、本当にオリンピックや世界大会に行くためにめちゃくちゃ練習を積み上げているわけです。それを知ったうえであのリオのフライングを思い出すと、さらに“一瞬”の持つ重みを感じて」

　そんな経緯を経て生まれたのが、『ひゃくえむ。』という作品である。

　生来の才能を持つスプリンターであるトガシと、そのトガシとの出会いによって100m走にのめり込んでいく晩成型の小宮という対照的な主人公2人の姿を描いた同作だが、それ以外にも作中には多くのスプリンターたちが登場する。

　そして、そのそれぞれのスプリンターが10秒に懸ける各々の「哲学」を持っている。それこそが、魚豊さんがあのリオの一瞬で感じたものの帰結なのだという。

「自分より全然、年上の選手たちが実際にほんの10秒という一瞬に人生をかけている。その10秒間には、普通の人の時間とは違った意味がある気がしました。100mという距離を走る10秒間は、スポーツとしてのゲーム性を感じるには明らかに短すぎる時間です。

　それでもあの競技に打ち込む人たちは、それぞれが各々の哲学の下に、人生そのものを懸けているんですよね。オリンピックでのフライングという、偶然の1シーンがきっかけではありましたが、その熱量を伝えられたらとは強く思いました」

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