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井上尚弥に完敗「表情がね、どんどん変わって…」“アフマダリエフの絶望”を長谷川穂積は見た…中谷潤人の勝算は?「あのジャブを殺さないと勝てない」

posted2025/09/21 11:05

 
井上尚弥に完敗「表情がね、どんどん変わって…」“アフマダリエフの絶望”を長谷川穂積は見た…中谷潤人の勝算は?「あのジャブを殺さないと勝てない」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

井上尚弥に“空転”させられた挑戦者ムロジョン・アフマダリエフ。その表情は次第に絶望の色が濃くなっていった

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Finito Yamaguchi

スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)が難敵と見られたWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に3-0判定勝ちでベルトを守った。元3階級制覇王者、長谷川穂積さんが息をのんだモンスターの強さとは。そして対決の機運がますます高まった中谷潤人(M.T)戦の行方は──。(全2回の2回目/前編へ)

「解説席から見ていて…」驚異的なジャブのタイミング

 井上がアフマダリエフとの一戦で残したインパクトは絶大だった。最後まで荒々しく仕留めにいくラフな姿を一切見せずゴールテープを切る姿は、多くのファンに新鮮に映った。最終スコアは117-111、118-110、118-110。長谷川さんは井上のジャブのレベルの高さにうなった。

「テクニックで目を引いたのはやっぱりジャブです。あのタイミングの良さ、ノーモーションの滑らかな打ち出し。解説席から見ていて『ここで打ったら当たる』と思う瞬間があるんですけど、井上選手は僕が『思う』瞬間じゃなくて『おも』くらいで打つんですよ」

 ジャブからつなぐ右パンチもよく当たった。

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「ジャブを当ててから右ストレートを上下に打ち分けるタイミングも抜群でした。あのワンツーってちょっとタイミングをずらしているんです。最初からワンツーを打つと決めていたら『バンバン』ですよね。でも井上選手は『バーン、バーン』。ジャブを打った直後の0コンマ何秒で続く右が当たるか当たらないかを判断している。当たらないと思ったら打たない。そういう打ち方をしていました」

「あのボクシングをされたら勝てません」

 結果的に井上は最強と見られた挑戦者に何もさせず、文句なしの判定勝ちを収めた。長谷川さんは「すごすぎる」を連発しながら続けた。

「アフマダリエフ陣営は井上選手がもっと攻めてくると思った? うーん、そうかもしれないですけどね。アフマダリエフは井上選手が5月に対戦したラモン・カルデナスと同じチームでしたから。でも、そういう次元じゃなかったですね。たぶんアフマダリエフはここまでのレベルの差、技術の差があるとは思っていなかった。スピードの差がモロに出てしまいました。ハンドスピードと足のスピードの差が圧倒的でした」

【次ページ】 中谷潤人は井上尚弥のジャブを“殺せる”のか

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