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「最後の望みを絶たれ…沈んだ表情に」アフマダリエフが井上尚弥に心を折られた瞬間…元世界王者・飯田覚士の見解「中谷潤人選手はやりにくいと思ったでしょうね」

posted2025/09/18 11:10

 
「最後の望みを絶たれ…沈んだ表情に」アフマダリエフが井上尚弥に心を折られた瞬間…元世界王者・飯田覚士の見解「中谷潤人選手はやりにくいと思ったでしょうね」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

最強の挑戦者アフマダリエフを12回判定で完封した井上尚弥。この試合のポイントを元世界王者・飯田覚士が徹底解説した

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Hiroaki Finito Yamaguchi

世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が9月14日、名古屋・IGアリーナで防衛戦を行ない、史上最強の挑戦者と目されたムロジョン・アフマダリエフに12回判定勝ちを収めた。ダウンこそ奪えなかったものの、終始相手を圧倒し何もさせなかったモンスターのボクシングを元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏はどう見たのか? 全2回にわたって徹底解説する。<NumberWebボクシング評論/全2回の後編/前編へ>

アフマダリエフが「沈んだ表情に」

 追い込まれると、人は思わぬ力を発揮することがある。

 井上尚弥のスピードに翻弄される挑戦者ムロジョン・アフマダリエフも、それを信じていたに違いない。

 6ラウンド、アフマダリエフはチャンスをうかがっていた。右ジャブをコンパクトに振るも当たらず、横殴りの右も当たらない。井上も左で応じて距離が詰まったところで、挑戦者は井上の体にのしかかるように体を預けた。だが、その瞬間井上に左肩で押し戻されてしまう。一見、気にも留めないこのシーンこそ、飯田覚士は「大きな意味があった」と語る。一体、どういうことか。

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「前に出ていっても、パンチを当てられない。だったらもう力づくで体ごと捕まえようとしてみたらどうか、と。フィジカル勝負と言いますか、元々の体のパワーを使ってそこを突破口にすることを考えたはず。でもそこでグンと押し返されて、後ずさりしたんですよね。最後の望みさえ断たれた以上、心が折れたっておかしくない。僕の目にはかなり沈んだ表情に映りました」

 確かに、これ以降あまり前に出てこなくなる。パンチは放つものの、心なしか迫力が感じられない。

6ラウンドの攻防で「勝負アリ」

 6ラウンド、残り40秒だった。

 井上はアフマダリエフの右フックをかわすと、逆に前に出て右から左ボディーのコンビネーション3連発を見舞い、さらに右アッパー、左フックと畳みかける。続けて攻め込めば倒せるんじゃないかという期待感を漂わせる。1万6000人をのみ込んだIGアリーナが、最も盛り上がった時間でもあった。しかし井上はそうしなかった。ガードを上げ、深追いもしない。井上尚弥流のアウトボクシングに再び切り替えた。

「あの左ボディー3連発は、相手が対応できていないのが分かったうえで続けたと思います。ただこれ以上やると相打ちが来るかもと、リセットして違う展開にした感じでした。このラウンド、倒せる可能性は十分にあったでしょうね。でもそれを敢えてしなかった」

 6ラウンドの攻防で勝負アリと、飯田は見た。

【次ページ】 最終12ラウンド、ヒヤリとした瞬間

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