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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「最後の望みを絶たれ…沈んだ表情に」アフマダリエフが井上尚弥に心を折られた瞬間…元世界王者・飯田覚士の見解「中谷潤人選手はやりにくいと思ったでしょうね」
posted2025/09/18 11:10
最強の挑戦者アフマダリエフを12回判定で完封した井上尚弥。この試合のポイントを元世界王者・飯田覚士が徹底解説した
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
アフマダリエフが「沈んだ表情に」
追い込まれると、人は思わぬ力を発揮することがある。
井上尚弥のスピードに翻弄される挑戦者ムロジョン・アフマダリエフも、それを信じていたに違いない。
6ラウンド、アフマダリエフはチャンスをうかがっていた。右ジャブをコンパクトに振るも当たらず、横殴りの右も当たらない。井上も左で応じて距離が詰まったところで、挑戦者は井上の体にのしかかるように体を預けた。だが、その瞬間井上に左肩で押し戻されてしまう。一見、気にも留めないこのシーンこそ、飯田覚士は「大きな意味があった」と語る。一体、どういうことか。
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「前に出ていっても、パンチを当てられない。だったらもう力づくで体ごと捕まえようとしてみたらどうか、と。フィジカル勝負と言いますか、元々の体のパワーを使ってそこを突破口にすることを考えたはず。でもそこでグンと押し返されて、後ずさりしたんですよね。最後の望みさえ断たれた以上、心が折れたっておかしくない。僕の目にはかなり沈んだ表情に映りました」
確かに、これ以降あまり前に出てこなくなる。パンチは放つものの、心なしか迫力が感じられない。
6ラウンドの攻防で「勝負アリ」
6ラウンド、残り40秒だった。
井上はアフマダリエフの右フックをかわすと、逆に前に出て右から左ボディーのコンビネーション3連発を見舞い、さらに右アッパー、左フックと畳みかける。続けて攻め込めば倒せるんじゃないかという期待感を漂わせる。1万6000人をのみ込んだIGアリーナが、最も盛り上がった時間でもあった。しかし井上はそうしなかった。ガードを上げ、深追いもしない。井上尚弥流のアウトボクシングに再び切り替えた。
「あの左ボディー3連発は、相手が対応できていないのが分かったうえで続けたと思います。ただこれ以上やると相打ちが来るかもと、リセットして違う展開にした感じでした。このラウンド、倒せる可能性は十分にあったでしょうね。でもそれを敢えてしなかった」
6ラウンドの攻防で勝負アリと、飯田は見た。


