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「え!便乗ガッツポーズ!?」三浦璃来が木原龍一に思わずツッコミ…世界最強ペア“りくりゅう”が国際大会初戦で優勝「今日はちょっと暴れてましたね(笑)」
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2025/09/18 17:03
今季のフィギュアスケート国際大会初戦となる木下グループ杯で優勝を果たしたりくりゅうペア。フリー演技後に氷上に膝をつく木原龍一の頭を優しくなでる三浦璃来
「璃来ちゃんが横でガッツポーズしているのが見えたので、僕はするつもりなかったんですが、やっとくか!と思ってやりました」
それを聞いた三浦が「え! 便乗ガッツポーズ!?」とツッコミを入れる。すると木原がこう続けた。
「僕は、ツイストやデススパイラルのレベルが取れていないなという確信があったんです。でも去年に自分を追い込みすぎた記憶があったので、マイナス思考に行きそうになったんですけど『今日はもう十分だ!』と思い直して、便乗ガッツポーズでした」
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小さなミスにこだわらず、まずは喜ぶ。その発想の転換をこう説明する。
「昨年の失敗があるからです。去年は『どうしても(世界選手権2位になった)23-24シーズンよりも良くしたい』という思いが強すぎて、シーズン前半は空回っていました。今年は、自分達がやってきた確かな結果もあり、たとえ1試合うまくいかなくても、歩んできた道のりは崩れ去らないというメンタルでやっています」
「龍一君が新しいゲームを勝って、楽しそう」
自信と笑顔に満ちた2人に“どんな夏(の練習)を過ごしたか”と問うと、三浦はあえて冗談で答えた。
「龍一君が新しいゲームを買って、毎日楽しそうだったのも良かったと思います」
そう指摘された木原が、メジャーリーグの野球ゲームについて詳しく説明を始める。その面白さを楽しそうに語る木原を見て、三浦が「今日のインタビューで一番話が長い」と言って笑う。試合後どころか、ショートの演技後から冗談を言い合う様子に、確かな自信と余裕があふれていた。
そしてフリーは、2人の真骨頂ともいえる映画「グラディエーター」のテーマ曲だ。古代ローマのコロッセオで戦う剣闘士の物語である。
「ずっとやりたかった曲。プレイリストを作って車の中でも聞いていて『やっぱりこの曲がいいよね』と話し合っていました。グラディエーターというと、映画の剣闘士をイメージしてしまう。自分たちには合わないかなと思って諦めていました。でも聞いていると気持ちが上がってくる曲なので、どうしてもやりたいと考えて決めました」と木原。
振り付けを依頼したのは、モントリオールで世界最強のアイスダンスチームを率いるマリーフランス・ディブレイユ。笑顔が持ち味の自分たちとは合わないと思い込んでいたが、こう提案されたという。
「マリー先生から『戦いがテーマではなくて、自分たちの道は自分たちで切り開くというテーマで演じる』という解釈のアイデアをいただいて『ああ、そういう考え方もあるんだ』と思いました」(木原)
そのうえで、道を切り開くというテーマについて、三浦が「私達は、辛いときもあったし、乗り越えてきた壁の数も多かったので」というと、木原が「そのすべての経験を生かして、その思いをすべて込めて演じます」と続けた。
国際大会初戦で自己ベストに迫る得点
本番では、高さのある3回転ツイストや、3連続ジャンプ、スロー3回転フリップを着実に成功。3回転サルコウとスロー3回転ループでミスはあったが、曲全体の勢いやテーマ性を崩さずに滑りぬく。そして最後に待っているのは、目玉となる「4つ目のリフト」だ。規定でのリフト要素は3つだが、自由な技を入れられる「コレオシークエンス」に、あえて体力を使うリフトを入れたのだ。




