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「お前ら、どんだけだらしない生活してたんだよ!」箱根駅伝未経験の理系大学に“出場請負監督”がやってきた! 学生は「箱根? 本気で?」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2025/09/18 11:06
今年4月から芝浦工大の駅伝部監督に就任した徳本一善。前任の駿河台大を2度の箱根出場に導いた名将を驚かせた学生たちの実態とは……
学生は大学の支援を受けている自覚を持ち、努力を惜しみなく自分の成長につなげる責任がある、と徳本は言う。彼らには「チームへの貢献やアスリートとしての成長なくして、これまでの待遇を得られると思うな」と告げた。
大学にサポートして欲しければ、責任を持って実績を残せ
「学生は『はぁ?』って感じで、『なんでレースに出るのに自分でお金を払わないといけないの?』というんです。それ自体、おかしいじゃないですか。今まで出してきた経緯があり、それにこれまで甘えてきただけです。その待遇が欲しければ責任を持って走り、実績を残せ、と。そこまでやれるかどうかの選択はみんなにあるから、自分でしっかり考えてほしいと伝えました」
監督に就任してすぐにその話をしたのは、ぬるま湯に浸っていた学生の意識改革のためだった。箱根駅伝はいわゆる学生スポーツではなく、大学から活動資金が出ており、経営の一部としてやらないといけない“事業”だと徳本は考えており、そのためにやってくれるならお金は出す。
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だが、ムダな時間を過ごすような態度で居座るだけならやめてほしい。箱根を目指すには、そのくらいの覚悟が必要だということを学生に理解してもらい、意識を変えてもらう狙いがあった。
もうひとつは、大学から資金が出ているのと、両親が捻出して出してくれた場合とでは、学生の頑張りがまったく異なるからだ。出してもらうのが当たり前では、感謝の気持ちが芽生えず、やる気にも繋がらない。両親の負担が増えるケースもあるが、感謝の気持ちを持って取り組まない限り、徳本は「個人もチームも成長はない」と考えている。
意識改革の手応え
この狙いは、思ってもみないところからの連絡から、うまく行っていると確信することができた。駅伝部の学生の両親から「息子の目つきが変わりました。引き続きご指導よろしくお願いします」と連絡が来たのだ。
学生の不満はあれど、意識改革は周囲を巻き込みながら徐々に学生に浸透し、徳本は手応えを感じ始めていた。
〈全3回の1回目/2回目につづく〉

