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男子バレー“完敗”なぜ?「藍でも取れなかった」石川祐希、山本智大も現地記者に本音ポロリ…難敵トルコが徹底した“強豪ニッポンの倒し方”
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2025/09/14 11:05
バレーボール世界選手権で黒星スタートとなった男子日本代表。試合後、キャプテン石川祐希は仲間たちに言葉をかけて労った
先のVNLでもマンディラチはサーブランキングで全体1位だった。この日の活躍は決して想定外ではなかったが、あれほどノータッチエースを取られる日本代表はここ最近の試合ではかなり珍しい。
とはいえ、これまでの日本代表ならば、どんなビッグサーブや強打に対してもお家芸であるディフェンス力で応戦してきた。しかし、この日は何とかつないで攻撃に繋げてもトルコの高いブロックが何度も何度も日本の前にそびえ立った。象徴的だったのは第2セット中盤のシーン、12対10とリードした状況から4本連続でブロック得点を献上した。
スパイカーの技術やセッターのトスワークが要因と考えられるかもしれないが、そう単純ではない。点差が離れる中で打ち急ぐことが多く、リバウンドから切り返すケースが少なかったのは事実だが、ブロックを抜けた先には必ずトルコの選手がいた。石川や高橋の攻撃も切り返す場面が何度も見られた。つまり、日本のバレーボールは徹底的に分析されていた。
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「今日のトルコのブロックの付き方は、僕たちの試合を見てとても対策しているなと感じました」
キャプテンの石川は、唇を噛み締めるようにこう言った。
振り返れば、日本代表は体格で勝る強豪国に勝機を見出すべく、徹底的に分析を重ねてきた。いかなる状況でも果敢にセーブで攻め、相手の攻撃を単調にしたところでブロックを揃え、抜けたコースにレシーバーを配置する。この緻密な連係こそが日本代表の強みであり、パリ五輪でメダル候補に挙げられるまでの躍進を遂げた要因だった。
だが、現在は“世界の強豪国”として認められ、中堅国から追われる立場になった。日本と対戦する国々は、いかなる時もベストサーブで攻め、崩したところにブロックとレシーブで対応し、ハイセットからの攻撃を打ち抜いてくる。世界選手権の初戦でトルコが見せたバレーボールは、かつて日本が追求して極めてきた“強者に対する戦い方”と同じだった。
男子バレーが踏み入れた新しいステージ
“国際大会の表彰台”を目標に掲げる石川の言葉には実感がこもる。
「世界から追われる展開、チームになった以上、たとえメンバーが変わって、まだ慣れていない選手がいてもどんな状況でも勝って、結果を出さなければいけない。チームとして難しい状況だからこそ、この大会で勝って、自信をつけたいと思って臨んだスタートで、むしろその逆になってしまった。でもそういう経験も必要だし、これを乗り越えていかなければやっぱり勝てないので、これも一つの土台として、もう一度明後日(15日のカナダ戦)に向けて準備したいと思います」
メダル獲得に向けて手痛い敗戦であるのは確か。だが、世界選手権はまだ始まったばかり。追い込まれてこそ強い。それも、真の強豪が持ち合わせる要素であるはずだ。


