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「東大卒の両親、兄は京大生の17歳」「藤井聡太が“詰将棋早解きで勝てない”と脱帽」難関すぎる三段リーグ突破でプロに…4人の意外な素顔 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2025/09/15 06:02

「東大卒の両親、兄は京大生の17歳」「藤井聡太が“詰将棋早解きで勝てない”と脱帽」難関すぎる三段リーグ突破でプロに…4人の意外な素顔<Number Web> photograph by Kyodo News

(右から)山下数毅、生垣寛人、岩村凜太朗、片山史龍の4人が難関の奨励会三段リーグを突破した

 中学3年だった三段リーグ2期目に、13勝5敗で次点を獲得した。それもあって2016年の藤井聡太以来となる6人目の「中学生棋士」の誕生が期待された。それ以降は12勝6敗が2回あったが、次点2回の四段昇段に至らなかった。

 山下は23年にプロ公式戦の第37期竜王戦に三段として初出場すると、6組ランキング戦で勝ち抜いて24年5月に決勝に進出した。藤本渚四段(当時18)に勝って優勝すれば、特別規定で三段リーグの次点の対象となり、フリークラス編入の形で棋士になれたが敗れた。

 しかし第38期竜王戦の5組ランキング戦で優勝し、次点2回を獲得して四段昇段の権利を得た。それは任意の選択だったが、師匠の森七段と相談して行使した。森は「三段リーグの厳しい壁を経験したのは、今後の棋士人生に生きる」と語った。

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 山下の将棋は、詰将棋で鍛えた読みの深さが強みだ。今年3月の詰将棋解答選手権では前述の岩村に次いで3位に入った。難解な終盤の局面を考えるのが好きだというが、藤井七冠も同じことを口にしている。目標とする棋士は、強靭な二枚腰で崩れない大山康晴十五世名人。

 山下の両親はともに東大出身で、父親は京大の数学者、母親は大手予備校の数学講師。兄は京大の学生。学者一家の中から棋士が生まれた。

競争率20倍…難関すぎる三段リーグへの個人的意見

 なお岩村と片山は飯塚八段門下の兄弟弟子。同門で同期に四段昇段は次のような例がある。2021年4月に狩山幹生五段(23)、横山友紀四段(25)=井上九段門下。09年4月に大石直嗣七段(36)、澤田真吾七段(33)=森七段門下。1987年10月に中川大輔八段(57)、先崎学九段(55)=米長邦雄永世棋聖(当時44)門下。生垣は10人目の井上九段門下。山下は15人目の森七段門下。山下の誕生日は炭崎俊毅四段(17)の1日後なので、最年少棋士となる。

 これらの4人の新四段たちが、将来はタイトル戦で藤井七冠に挑戦することを期待したい。

 今回の三段リーグの人員は40人。昇段の競争率は20倍という難関だ。次回は4人の新四段が抜けるが、新三段が入ってくるので、人員の多さに変わりはない。私こと田丸の個人的な意見は、前期・後期の各2人の四段昇段者のほかに、前期・後期の最高勝率の1人を加えて、年間5人に増やしたいと思っている(次点2回、棋士編入試験の合格者を除く)。

 こうした意見を述べると、財政難に陥っている囲碁団体の日本棋院の二の舞になると、将棋連盟の内部だけでなく外部からも憂う声がいつも出る。ただ現役棋士の人数は、将棋連盟は約200人、日本棋院は約500人と大きく違う。それほど心配ないと思う。

 現在の三段リーグには、20歳以下が約10人いる。有望な若い芽を摘んでほしくない、というのが私の本意だ。〈将棋特集:つづく〉

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