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「やっぱり、2人だから」高校生クイズで優勝した双子のその後…大学が分かれても「道が違った感じはなかった」東兄弟が明かす“それぞれへの思い”
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別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:03
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
異例の高校生クイズでナゼ…桜丘が勝てた理由
ただ、周囲の言葉が最も的確に状況を表していた。
決勝で敗れた横浜サイエンスフロンティア高のメンバーは決勝後、驚きとともにこんな言葉をかけてきたという。
「まぁでも、やっぱり桜丘が優勝するのが一番、妥当だったよ」
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問が苦笑する。
「大会前の自己紹介の時に、『優勝します!』って宣言したじゃないですか。当たり前ですけど、この年の高校生クイズにそんなヤバいチーム他にいなくて(笑)。何が何でも、とにかく優勝するんだという、その1点においてだけは……明らかに他のチームとは違いましたね」
実は準決勝開始前、残った5チームはそれぞれ記念に大会で使った校名ボードに寄せ書きをしていたという。それでも桜丘は「俺たちは優勝した後に書き込むわ」と伝えていた徹底ぶりだった。それだけ勝ちを狙い、本気で全国制覇を目指していた。
空気は、あえて読まなかった。読まなかったからこそ、勝てた。
九州は鹿児島発、遠く三重を経由してやってきた破天荒な双子の一世一代の大博打は、こうして東京・麹町の日テレスタジオで幕を閉じた。
翌年の大会では、あっさり負けた
翌2019年の8月、この年の『高校生クイズ』の全国大会にも3年生になった東兄弟を含む桜丘チームの姿はあった。
コンセプトは前年同様、運の要素も強い「地頭力」だったが、前回大会優勝者にワイルドカード枠での出場権が与えられ、予選が免除されたからだ。ただ、そこに立つ2人のスタンスは前年のものとは全く異なっていたという。
「なんだろうな、前年があまりに劇的過ぎて。もうどうやってもそれより楽しめることはないだろうなと思っちゃったんですよね」(言)
「狙って勝つ」ことを許さないシステムの中で、あえてその枷を壊して「狙って勝った」。そんな劇的な幕切れを果たしたのだ。奇跡と言っていい年と同じ熱量までモチベーションを持っていくのは、端的に難しかった。というよりも、持っていく気にもなれなかったというのが正確なところかもしれない。
「前年がひどすぎたんで、その年はみんなと仲良くしようと思ったんです(笑)。ニコニコして、いろんな人と話して。みんなと遊びましたね」(問)
高校最後の『高校生クイズ』では、東兄弟はあっさりと2回戦で敗れた。それでも、不思議と悔しさはなかった。
そして高校卒業後、それまで何だかんだとともに歩を進めてきた双子の道に、微妙な違いが生まれることになる。


