Number ExBACK NUMBER
「やっぱり、2人だから」高校生クイズで優勝した双子のその後…大学が分かれても「道が違った感じはなかった」東兄弟が明かす“それぞれへの思い”
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:03
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
兄・問は競技クイズの最高峰で優勝
むしろ競技クイズ的な側面から見れば、大学入学後に結果を出したのは問の方だった。
大学3年時の2023年、学生による競技クイズの最高峰の大会である「abc」で優勝を果たしたのだ。
「勝てるもんだなぁと。ただ、『高校生クイズ』の時ほど“奇跡”という感じはしなかったですね。中1から出場していて、ずっと勝つ準備をしてきて、それでも勝てるかはわからないけど、勝つ可能性はある大会に勝った感じで。達成感はありましたけど、運という感じはしなかったです」(問)
ADVERTISEMENT
ただし、ほんの少しだけ「クイズ」というものへの向き合い方に変化は出たという。
「abcもそうですけど、競技クイズって100回やって誰かが100回勝てる競技じゃないんです。あの日はたまたま僕が一番強かっただけで、僕が他の大会で負けることは全然、あり得る話で。
でも、周りはそうは思ってくれない。他の大会であっさり負けようものなら『え、abcの王者がこんなところで負けるの?』という声も聞こえてくる。だからって、絶対に負けないようにしようとすると、どんどん辛くなっちゃうと思うんですよ」
「楽しくない努力はやらない」東兄弟の根幹
だからこそ問はあえて「楽しくない努力はやらないことにした」という。
「例えば競技クイズのために何かを暗記することって、大会で役に立つから覚えるわけじゃないですか。それで正解に結びついて、楽しいという面ももちろんある。
でも、やっているときは多少なりとも苦しいというコストを払ってその知識を得ているわけで。それで大会とかで報われないと『俺、こんなに頑張っているのに』とどんどん苦しさだけが積み重なってしまう。そうなるとクイズ自体が嫌いになってしまう気がして……なるべく楽しくない努力はやらないようにしようと」
考えてみればここまで2人のクイズへの想いは、徹頭徹尾「楽しい」に裏打ちされたものなのだ。
クイズが楽しいから、それで勝つためには学校を転校することだって辞さない。傾向の変化に苦しめられても、勝った方が楽しい以上は、諦めない。大学受験に失敗したからといって、クイズの楽しみ方が変わるわけではない。
楽しいから、続けられる。続けるために、楽しくあろうとする――。それこそが東兄弟の根幹なのだ。

