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高校生クイズに人生を懸けた双子の天才「パワー系の種目はやめて…」難問の救世主となった“3人目の男”「番組側も想定外だった」まさかの行動とは?
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:02
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
「終わった後の控室でもそれまでの参加チームの空気感もわかるんですけど、なんかみんな疲れているのが分かるだけで、タイムとかは言っちゃいけないので。本当に発表まで全然、結果がわからなかったです」(問)
結果発表は、1位から順にチーム名が呼ばれる。1位が米沢興譲館、2位はラ・サール……そして、7位までに桜丘の名前は呼ばれなかった。余談だが、1位の米沢興譲館は参加者が野球部所属ということもあり「普通にタイヤを運ぶ」という、まさに体力押しの解法だった。
「正直、これは詰んだな……と思いました。あと1枠で呼ばれるのはさすがに出来過ぎている。あとは『アイデア賞で何とか引っかからないかな』とか、そんなことを考えていて」(言)
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だが、その「出来過ぎ」のラスト1枠に滑り込んだのは、桜丘だった。
ギリギリであろうと何であろうと、明らかに苦手なジャンルの設問をクリアできたこと自体が大きかった。
「とにかくここを抜けたのは本当に奇跡的でした。『これは流れが来ている』と思いました」(問)
苦手意識のある体力系の問題を突破できた。流石に同大会で2度、同じようなジャンルが来るとは考えづらい。この後はどこかで自分たちの得意な競技クイズ的なタームもあるだろう。残りのチーム数を考えても、かなり有利な位置にいられるはずだ――。
2回戦を終えた桜丘の面々は、そんな自信を抱きつつあった。
「一番怖かったのは…」ライバル視した相手とは?
続く3回戦、4回戦も無事に突破した桜丘が準決勝に挑むところで、残るチームは5校となっていた。
残ったのは桜丘をはじめ、ラ・サール、甲府南(山梨)、横浜サイエンスフロンティア(神奈川)、函館ラ・サール(北海道)という面々だった。ラ・サールを除けば、その時点でのいわゆる競技クイズの強豪校はいない。コンセプト通り、これまでの歴史にはない非常に珍しいケースになっていた。
「ラ・サールは競技クイズの文脈でも強いし、シンプルに強かったです。でも、優勝するにあたって一番怖かったのは横浜サイエンスフロンティアですね。横浜市立の公立高校で、それまで全く未知の存在だったんですけど、名前から科学やものづくり的な知識に特化していることが想像できたので」(問)
通常の競技クイズの大会であれば、そういった学校はそれほど警戒すべき対象ではない。だが、ことこの年の大会コンセプトを考慮すると、優勝を狙う桜丘にとっては、明らかに要注意のチームだった。
準決勝で与えられた課題は、「バースト・ザ・バルーン」と題されていた。
床に紐でつながって浮かぶ200個の風船を全て割るまでのタイムを競う。スタート前に文房具店で45分間の買い出しを行い、60分間の工作タイムで自作の道具を制作するというものだった。上位3校が決勝進出となる。

