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高校生クイズに人生を懸けた双子の天才「パワー系の種目はやめて…」難問の救世主となった“3人目の男”「番組側も想定外だった」まさかの行動とは?
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:02
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
「パワー系の種目だけはやめて…」まさかのタイヤレース
続く2回戦は、桜丘にとって最大の山場となった。
出されたお題は「タイヤレース」。30m先のゴールに10kgのタイヤを10本、20kgのタイヤを12本の計340kgを運ぶ。方法はどのような形でもよく、「セット内にあるものを何でも使ってよい」というルールだった。
15チームのうちタイムでの上位8チームと、下位7チーム内で最も斬新な輸送方法を編み出した1チームが「アイデア賞」として勝ち抜ける。
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「もともと予選を通過して全国が決まった後に『本戦当日は運動できるジャージを用意してください』と言われていて。当時の『高校生クイズ』は“知力・体力・時の運”を重視していましたし、その時点でどこかで運動系の課題が出るだろうなというのは予想できました。それもあって……大会前は鹿児島に帰省したタイミングで、ランニングとかまでしていました(笑)」
続けて「何かをやらなくて、そのせいで負けたら後悔が残ると思ったので」と言が語ったように、対策のしにくいコンセプトの大会であったとはいえ、勝つためにやれることはとにかくやっておきたかった。
そもそも桜丘チームは、体を動かすルール自体が不得意なわけではなかった。だが、3人平均で体重が50kgに満たない細身ということもあり「パワー系の種目だけはやめてほしいと思っていた」という。ところが、まさにその苦手にピンポイントでヒットしたのだ。
ただ、幸運だったのは比較的通過率が高い2回戦でその「苦手」が来たことだった。
「これが決勝とかだとかなり厳しかったと思います。倍率が厳しくないところで来たのが逆にラッキー……みたいにポジティブには考えていました」(問)
桜丘の3人が考えたのは、大道具に使われていたポールを引き抜いて、そこに大量のタイヤを通し、一気に運ぶというものだった。
最大のピンチをいかにくぐり抜けたか?
これは、体力に自信がなかった3人が、万が一タイムで落ちた場合に備えて「アイデア賞」での選出も両にらみで考えたからだった。
「とにかく何か目新しいことはやろうと思って。でも実際にやってみたらタイヤがめちゃくちゃ重くて全然動かなかったんですよね。なので全く思ったような速さでは運べなかったんですけど」(言)
しかもこの時、他のチームがどんな作業をしているのか、どんな速さで運んでいるのかといった状況は一切見ることができない。そのため、早いのか遅いのか、自分たちの手法が斬新なのかどうかの手応えも全くないという怖さもあった。

